| まだ少し冷たい風が花びらを運んできた。 「あー、酒でも飲むか...」 呟いてコンビニに向かった。 ひとりで花見をするようになったのは上京をしてから。 人に話すと同情の眼差しを向けられるが、自分にはこれが性に合っているので、何ら苦になっていない。 勿論、大勢でドンチャン騒ぎすることも好きだ。 まあ、人生のメリハリのようなもの。 コンビニで最近発売されたお気に入りのチューハイを2本購入していつも歩く川沿いの遊歩道に向かった。 「夏は毛虫が降ってくるんだぜ」 この近くが職場の友人が笑いながら言っていた。 だから、夏は桜並木にはなるべく近付かない。 ベンチに座って対岸の桜を眺める。ライトアップされた桜はきらきら光っているように見えて幻想的だ。 「さーみしそー!」 不意に背後から声がした。 「あら?」 振り返ると彼らはニッと笑う。 「お前、お一人様に慣れ過ぎ」 そう言ってわたしの隣になんの断りもなく座ったのは清川和巳。ベンチの傍に立っているのは石浜修。 2人は同じ職場の仲間同士。そして、わたしは清川こと、キヨと同郷の誼と言うヤツだ。 田舎の、小・中・高と同じ学校に通っていたから『幼馴染』と言っても過言ではないけど、そう言うと幼馴染が山ほど居ることになるから、敢えてそのカテゴリーから外している。 石浜こと、ハマとはわたしがこっちに出てきてからの友人。キヨと、同期だからって結構仲良くて、いつの間にかわたしも仲良くなった。 「練習は?」 「とっくに終わって、残ってフィジカルトレーニングしてきたとこ」 「シーズン始まったんだから、大人しく家に帰りなよ...始まってるよね?」 彼らはプロサッカー選手。友人がプロサッカー選手といえば、自慢の種らしいが、わたし自身がそんなに興味がないから自慢の種となっていない。 田舎に帰れば、キヨも英雄だが、彼らの所属しているチームはそんなに強くないらしく、テレビのニュースで取り上げられているところを見たことがない。 あ、最近見たかも。 「そういや、また監督交代だって?忙しない職場だねぇ」 「スゲー今更な情報...」 苦笑しながらハマが言う。 「だって、当分会ってないじゃん」 そう言うと「そうだっけ?」とキヨが指を折る。 何本か指を折ってキヨが手を止めた。 「そういや、は正月帰った?」 「うん」 「よく帰れてるな、お前...」 「キヨのお母さんに『和巳は元気?』って聞かれたから『彼女居ないくせに友達とつるんでばかりなので、色んな疑惑が飛んでるよ』って答えておいたから」 「おまっ!益々田舎帰り辛いだろうが!!」 「早く帰らないと、背びれ尾ひれなんてもんじゃ落ち着かないくらい色々ついてくるよ」 笑って言うと隣に座っているキヨが頭を抱えてこの世の終わりのような表情をしている。 「ちなみに、の言うキヨの友達って...」 「キヨのこっちの友達ってハマ以外にいるの?」 真顔で返すと 「俺ってとばっちりだよなぁ...」 とハマが遠い目をした。 いつの間にか少し冷たいと感じていた風がそれほど冷たくなく、どちらかといえば心地よいものとなっていた。 |
桜風
12.4.28
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