| キヨは高校を卒業してすぐに上京した。 スカウトの目に留まって今のチーム、イースト・トーキョー・ユナイテッドに入団したのだ。 そして、わたしは遅れること2年して東京に上京した。 わたしの実家は、どうにも封建的なところがあって、女子は学歴よりも家庭の事ができる方が良いと言う主義の親を持っていたため、進学のために上京だなんて許さないと言う人だった。 田舎にはありがちな考えなのかと思っていたけど、そうでもないと言うのを上京して知った。 仕方なく、地元の短大に進学し、就職なり進学なりで上京することを虎視眈々と狙っていた。 わたしが通っていた短大の学科は、服飾系だった。それが許されたのが、大きく括って『家庭科』の範囲に入るから。 その内容を見れば大きくかけ離れていると言うのは分かるけど、そこまでの興味はわたしの親にはなかったようだ。 そして、幸運なことに、上京のチャンスが巡ってきた。 東京でアパレルデザイン会社を経営している卒業生が声をかけてくれたのだ。 外面はいい親だから、外の人に言われればそんなに強く反対することが出来ずに、結局わたしの上京は承諾された。 上京してから、凄く大変だったけど、これは自分が決めたことで望んだことだから。 そんな中、そういえばキヨも東京に居たな、と思い出して彼の所属するチームのクラブハウスに向かったのが再会のきっかけだった。 彼の職場は有名で非常に助かった。 キヨの所属するチームは、地元密着型といえば聞こえがいいかもしれないが小ぢんまりとしたチームだった。 練習をしているのは見えたけど、見学とか良いのかな、と思って周りを見たら、ちょっと怖い感じのお兄さんとかちびっ子が居た。 たぶん、手続きとかないんだろう。 隅っこでこっそり見ていると、何だか見慣れなた顔の見慣れない長髪が居た。 「えー...」 思わず声が漏れる。 髪の色だって何だか明るくなって。 ああ、何たらデビューってやつかと納得した。 高校に上がったときにイメチェンをしたら「高校デビュー」とか言われる、そういう感じの。 そう思うと、キヨのこっちでの奮闘振りが覗えて少し楽しくなった。 練習が終わって選手達がファンサービスをしている。 キヨは、そこまで人気のある選手ではなさそうで、そのままさっさと建物に入っていくようだった。 けど、その寸前で目があって、キヨは目を丸くして口までパカッとあけた。 そのまま足早に近付いてきて、「どうしたんだよ、」とわたしのことを覚えていると主張した。 「久しぶり」 「おう。観光か?」 「就職」 にこりと微笑んで言うとキヨは周囲を憚るように気を配って「よくお前んちのおじさんたちが許したな」と声を潜めて言った。 「あー、うん。ま、ラッキーだったのよ」 「ラッキーの一言で片付けられることとは思えねぇけど...」 そう言って苦笑した。 「んで、ここまで来てどうしたんだよ?」 「ああ、ふとキヨを思い出しただけ。キヨも上京したんだったよなーって」 「何だ、会いたくなったって素直に言えばいいのに」 ニヤニヤと笑ってキヨが言う。 「あー、すごーくあいたかったのー」 感情を込めずに言うとキヨは「かわいくねー」と苦笑した。 「キヨ?」 声をかけてきたのは彼のチームメイトだった。 「ああ、ハマ。、こいつ、ハマ」 「はい、本名フルネームで紹介しようね」 そう突っ込むと笑って「石浜修。俺と同期で同じポジション」と改めて紹介してくれた。 もちろん、わたしのことも本名フルネームでの紹介だ。 「初めまして、いつもキヨがお世話になってます」 そう挨拶すると、「お前は俺の母親か!」とキヨのツッコミが入り、ハマは笑った。 それから、たまにご飯を食べに行ったり、ちょっと遠くまでドライブに行ったりとした。 そのときは、いつもキヨとハマと3人で。 誰かの都合がつかなかったら残りの2人で、ということはなかった。いや、キヨとハマは2人で出かけていたかもしれないけど。 わたしが加わると大抵3人で。 それが当たり前で、変わらないと思っていた。 |
桜風
12.5.5
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