| 翌日、キヨから電話が掛かってきた。 『ハマに移籍の話が出てたんだぜ』 少し驚いたように、どこかショックだったように。 「そうなんだ?ハマは何て??」 知らないほうがいいのかと思って改めて聞いてみた。 『話を聞きにいっただけだって。それだけでも驚きだけどな。ま、ウチのフロントもハマを手放すつもりはないって言ってたし。ホント話だけなんだと思う』 「けど、ハマにそういう話が来たってのはキヨにとっても刺激になったんじゃない?」 そういうと、電話の向こうで言葉に詰まった様子が伝わってきた。 『...なんで?』 「だって、ハマは別のチームにも必要とされたってことでしょう?今のチームのフロントが手放すつもりがないって言うなら少なくとも2つのチームに必要とされてるって事じゃない?まあ、需要って話も関わってくるだろうけど」 『そうだけど』 「だったら、同期で同じポジションのキヨだって、いつかそういう話が来るかもしれないってことでしょう?需要さえあれば」 『そっか...俺、今のチームから自分が出て行くってイメージが浮かばないなぁ』 「キヨのチームって移籍ってのは少ないの?」 『多くはないけど、今の正ゴールキーパーのドリさんは清水から来た人だし、コシさんにも昔はそう言う話は来てたみたいだし』 名前を出されても良くわからないけど、ない話ではないらしい。 「キヨはさ、ハマが今のチームから居なくなったら..どう?」 『どうって...うん』 そう言ったきり、キヨは黙った。 話を変えたほうがいいのかな、と思っていたら 『たぶん、ハマは移籍すると思う』 と電話の向こうのキヨが呟く。 「移籍しないって言ったんじゃないの?」 『言ってたけど、何となく』 「ねえ、キヨ」 『何だよ』 「そうやって、以心伝心的発言をしてるから、田舎であらぬ誤解を招く噂が流れるんだよ?」 『誤解を噂を流してる本人が言うなよ』 低い声でツッコミが入る。 笑って流すと『ったく』と電話の向こうのキヨが笑った。 『ありがとな、』 「今度なんか奢ってねー」 『中断期間中に、1回くらいメシ行こうぜ』 「それって、いつ?」 『今、まさに中断期間中だよ。近々合宿があるからそれが終わってからな』 「はいよー。何奢ってもらおうかなー」 『居酒屋な』 「けちー!」 そんな会話をして電話を切った。 そして、その翌日、ハマから電話が掛かってきた。 移籍すると言う話だった。 すぐに新しいチームに合流すると言う。 今のチームはレンタル以外は認めないといってくれたらしいが、自分がそれでは納得できず、移籍をするのだという。 「キヨから電話があったんだよ、昨日」 『マジで?俺の移籍の話?』 「そ。まあ、昨日の時点ではハマは移籍する気はないって言ってたんでしょ?けど、話してたらキヨってばハマは移籍する気がするって言ってた」 『なんで...』 「さあ?以心伝心的なアレじゃないの?ほら、ウチの田舎であらぬ誤解を招くくらいの仲良しさんだし」 『そのあらぬ誤解を招く噂をしてる本人の言葉じゃないだろう』 ハマが笑う。 「引越しは?」 『もう手配した』 「いつ?お見送りできたらするよ」 そう言うと『いや..』と言ったけど『そっか、やっぱり』と日付を言う。 「あら?車で??」 『近いじゃないか』 確かに。 「じゃあ、またね」 『ありがとな、』 「ん?」 『話、聞いてくれて』 「今度奢ってねー」 『シーズンが終わったらな』 そう言ってハマは電話を切った。 |
桜風
12.5.26
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