| 俺には5歳年下の幼馴染がいる。 年下のクセに昔から俺の面倒を見ようと何故か躍起になって、その都度いつも空回り。 でもその不器用な優しさが結構気に入ってて微笑ましいと思っていた。 それなのに、今はアイツの一挙手一投足を気にしている自分がいた。 その感情が恋だと知るのに然程時間は掛からなかった。 俺の好きな奴、それは。 意地っ張りな、心 の趣味はガーデニングだ。毎日とはいかないが時間があれば小まめに手入れをしているらしい。 今日も玄関を出ると垣根の隙間かららしい人物の影が見えた。 声を掛けようかとも思ったが、せっせと作業しているであろうに声を掛けるのは申し訳無いと考え直し、そのまま気付かないフリをしようと俺は足早に歩き出した。 「あれ?いっちゃん、珍しくお出掛け?」 俺が立ち去ろうとした足音が聞こえたのか、が垣根の向こう側で立ち上がって声を掛けて来た。 相変わらずの『いっちゃん』という呼び名に思わず苦笑いをした。 「ああ、か。まあな。あのさ、いい加減『いっちゃん』って呼ぶのやめろよ。恥ずかしいんだけど」 「ええ?じゃあ、なんて呼べばいいの?」 困ったように批判するに逆に問い掛けられた少し戸惑った。 確かに小さい頃からずっとその呼び名で呼ばれてたからいざなんて呼ばれたいのか聞かれると困る。 「『宮田さん』、とか?」 苦し紛れの一言だっても気付いただろうか。 昔から知ってる相手に今更『宮田さん』と余所余所しく呼ばれる事を想像して俺自身も苦笑した。 これは有り得ねぇな。 「却下。いいじゃん、昔からずーっと『いっちゃん』って呼んでるんだから」 「はいはい。じゃあな」 思った通りもキッパリと拒否する。まあ、当然か。 俺はその場でこれ以上立ち話を続ける必要も無いだろうと一応挨拶をしてその場を後にした。 は可愛くなった。以前も可愛かったけど、今の可愛さとはまた別物だ。 高校生にもなって何所となく大人の雰囲気を纏っている様な、そんな感じ。 そういえば昔、木村さんに茶化された事があったっけ。その時は俺もまだ高校入学したばかりで、なんてまだ小5だった。 そんな状況で俺とが付き合ってるって思う木村さんも少しオカシイが、あの人なりにいろいろ気を遣っての事だろう。 それに、あの当時はまだまだ全然を女として見てなかったと思う。 大事な奴だって認識はしてても、それは大事な『妹』であって大事な『女』ではない。 それなのに今ではの何気無い仕草にもドキドキして、思わず抱きしめてしまいたくなる。 アイツ、彼氏なんているんだろうか。 あまりそういう方向の話をした事無かったから全然分からないけど、当然いるんだろうな。 そんな結論の出ない事を思いながら空を仰いだ。 空は天気予報の通り晴天だ。今日も夜空が綺麗だろう。 太田荘のアパートの階段を登り、目的の鷹村さんの部屋の前までやって来た。 先週録り忘れたボクシングの生中継。電話をしたら鷹村さんが持っているって事だったから今日取りに行くって連絡しておいた。 あまり鷹村さんの部屋には入りたくは無いのだが、この際我儘は言っていられない。 俺は覚悟を決めてドアをノックした。 コンコンと俺がドアを叩く音の後に聞きなれた声が中から聞こえて来る。 「空いてるぞー」 その声に応えるようにドアを開けると、目の前には出し忘れたゴミ袋が2つ転がっていた。 危惧していた通り、やっぱり汚ねぇ。 「相変わらず汚ねぇ部屋ですね」 「うるせー!早く上がれよ」 鷹村さんに急かされながら靴を脱いで中へ入ると、そこには木村さんが居た。 「よお!宮田」 「あれ?木村さんも一緒ですか?」 「おお。もうすぐ板垣も来るぜ」 何か始まるんだろうけど、あまり想像もしたくない。 きっと変な事に決まってるだろうし、さっさとビデオ借りて退散しよう。 俺は鷹村さんに先日話しておいたビデオの件を持ち出して、ビデオを1本借りた。 俺の用件はこれだけだ。 この人達に捕まらない内に退散しようと玄関まで行こうとしたその時、鷹村さんに声を掛けられた。 「宮田!今日は俺様プロデュースの合コンに特別連れてってやる!感謝しろ!!」 「はあ?」 「鷹村さん、宮田はダメですよ」 「何でだ?人数足りねえんだからこの際コイツに女が集まりそうだとしても我慢しろ!むしろそこから奪え!!」 何言ってやがるんだ?この人は。鷹村さんの相変わらずの訳の分からない話に少々溜息を吐いた。 それにしても木村さんが何故か必死になって鷹村さんを止めようとしている。 俺としては有難い事なんだけど、木村さんのその必死さに少し疑問が湧いてきた。 「違いますって。その、宮田は幼馴染の・・・・」 語尾は随分と俺に聞こえないようにしていたようだが、しっかりと聞こえていた。 幼馴染。 木村さんが気にしている事がその一言でハッキリと分かった。 木村さんは俺との事を気にしているんだ。 「いいですよ。行きます。何時からですか?」 「よし!」 「マジか?大丈夫なのかよ、宮田」 木村さんが心配そうにそう忠告してくるが、俺は敢えて無視した。 「別にいいですよ」 「時間は7時から、場所はまだ決まってねぇ」 「7時からだったら時間ありますね。俺一旦家に帰りますから、場所決まったら連絡下さい」 鷹村さんに確認を取ってすぐに俺は靴を履いて外へ出た。 この場所にいつまでも留まっていると木村さんに何か言われるだろうと察したからだ。 たぶん、木村さんは俺のへの気持ちに気付いてる。 行った事も無い合コンへ参加しようとしたのはその反動と言ってももいいだろう。 俺の中でモヤモヤしている状態でも、木村さんはきっと鮮明に見透かしている。そんな気がした。 そして、それとは別に、他の女でも出来ればもしかしたらへの気持ちも収まるかもしれない。そういう気持ちもあった。 アイツは俺に興味は無い。きっと普通に隣の家に住む幼馴染だとしか思っていない。 それなのに、俺がいつまでもに恋心を抱いていたんじゃにとっても迷惑だろう。 に嫌われるのだけは嫌だ。 に嫌われるのだけは・・・・。 |