| 新たな、決意 不器用だ。 素直にそう思う。 「いっちゃんは気にならないの?」 が俺に言った言葉。 気にならない? 気にならない筈が無い。 俺はこんなにの事が気になってる。 が誰と一緒に居て、誰と一緒に笑って、誰と一緒に泣いているのか。そんな事まで気になってる。 俺はベットから身を起こして近くに置いてあった枕を無造作に投げた。 投げられた枕は壁に当たって力無く床へと落ちる。 イライラする。 自分の行動の全てに。 自分の定まらない不安定で脆い心に。 俺は全てを振り切るかのように無造作に投げ出されていた財布と携帯を持って部屋を後にした。 部屋に篭りっぱなしではの事ばかり考えてしまう。そうなれば必然的に自分の愚かさを思い知る。 それが嫌で、目的も無いままその辺りを彷徨い歩いた。 何処から何処へ、何時間くらい歩いていたのかすら分からない状態でふと空を見上げると、無数の電線が見えた。 空を覆い尽くさんばかりの電線の網羅に、閉鎖的な自分の感情と何所かダブッていると感じた。 空は確かに電線の向こう側にある。幾重にも重なっている電線の向こう側に青白い空が見えている。 でも、近づけない。何かに閉じ込められて手が届かない。 まるで俺のへの想いのようだ。 「おい、宮田!」 背後から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。 よく聞き慣れた声だ。振り返るまでもなく声の主が誰なのかは想像がついた。 「ああ、木村さんですか」 振り返って相手を確認する前に名前を呼ぶと、やはりそこに立っていたのは木村さんだ。 何をするでもなく散歩していたら、どうやら木村さんの家の前を通りかかったらしい。 見つめていた電線の束は木村さんの家の前の商店街のものだった。結構遠くまで歩いて来たと思っていたのに、結局そうでもないのだと気付いた。 木村さんは家の手伝いの最中だったんだろう。お店のエプロンを付けたままの状態で少し息を切らして俺に近付いて来た。 「何だよ、その言い方」 「別に」 不満そうに木村さんが溜息を吐いた。 何となく木村さんを見ると先日の合コンの事が思い浮かんできて不可解な想いが胸を過ぎる。 合コンの席から抜け出す。その後を追う木村さん。 これは嫉妬なんだろうか。だとしたら、俺はかなりの嫉妬深い男という事になる。 口ではに関係無いとか言っておきながら、結局は凄く気にしてるし怒りを感じる時もある。 情けない。 「あれからちゃんとどうだ?」 木村さんは俺の胸中を察しているのかもしれない。 エプロンを外して丁寧に畳みながら俺にねた。 「どうって、何ですか。気になるんですか?の事」 「おぉ?そんなに挑発的な目すんなって。俺は別にちゃんを狙ってる訳じゃないから安心しろよ」 木村さんの口からの名前が出た事で不満感を露にしながら木村さんへ反発する。 木村さんは、そんな猪突猛進な俺を軽やかにかわしながらニコリと微笑んだ。 全部お見通しなんだ、この人は。 「別に・・・・、俺には関係無いですよ」 ぶっきら棒にそう答えた俺は、嘘を吐いている事がバレるのを恐れて視線を逸らした。 こんな小細工をしたところで木村さんにはきっと分かってしまうだろう。俺がどんなにを想っているのかを。俺の秘めた想いを。 「嘘だな」 案の定、木村さんはそう告げた。 「相手の事を心配しすぎて、肝心の相手の気持ちを勝手に作り上げるのは良くないぞ」 「何ですか?それは」 「別に〜。俺の独り言だよ」 そ知らぬ顔して空を見上げる木村さんの発した言葉に、俺はこれでもかという程動揺していた。 相手の気持ちを勝手に作り上げる。 の気持ちを勝手に作り上げてるのか?俺は。 今まで考えもしなかった言葉に心底驚いていたんだ。 もしも、俺が勝手にの気持ちを作り上げてしまっているとしたら、とんだ情けない一人芝居だ。 「一度自分に正直になってみれば?」 「な、何言ってんですか」 「自分の気持ちに嘘突き通すのも本人の自由だけど、時には素直になるのも必要だって事だよ」 木村さんの真っ直ぐな瞳に見据えられて、俺は口を開く事すら封じられた。 「自分の気持ちと心中するのはその後でも十分間に合うだろ?」 衝撃的だった。 自分の気持ちと心中する。もしかしたら、今の俺にピッタリな言葉かもしれない。 木村さんは何もかもお見通しなのだと再確認させられるには十分すぎる程の言葉。 でも何故か、不思議と不愉快ではなかった。 「まっ、お兄さんからの助言ってトコだな」 いつものようにヘラヘラと笑う木村さんは、俺の頭をまるで子供をあやすかのようにポンポンと軽く叩いた。 その行動が何故か無性に腹が立たしくて俺は不機嫌さを顔一面余すところ無く押し出していた。 「木村さんにも忠告しておきますよ」 「何?」 「人の事に首を突っ込む癖、止めた方がいいですよ。自分の事がお留守になりますから」 人の事とやかく言う前に、自分の事どうにかしろ! 木村さんに自分の気持ちを知られている事と子供扱いされている事に、天邪鬼な俺の精一杯の反発の一言だ。 木村さんにこの反発が通用するかどうかはさて置き、とりあえず俺の気持ちはこの嫌味で少しは晴れただろう。 「うるせぇ。俺の事より自分の事をしっかり考えろっての」 「善処します」 木村さんはもう一度俺に困ったように笑いかけて、そのまま「じゃあ」とだけ告げて自分の家へと向かって歩き出した。 俺はその背中をただ眺めていた。 善処します、か。 木村さんにはまだ興味ないような素振りを見せたけど、正直俺はもう我慢の限界だった。 木村さんの言う通りだ。 まだ答えは何も出ていない。の気持ちだって良く理解し切れていない。 それなのに全部自分の独りよがりだと決め付けて全てを諦めていた。 こんなのは違う。本来の俺じゃない。 例え自滅しようともしっかりと伝えるべきなのかもしれない。 俺の出した答えがを傷付ける結果になろうとも、この気持ちを伝えたいという気持ちに嘘は無い。 自分の気持ちと心中するのはその後でも十分間に合う。 少しだけ、木村さんに感謝しなければ。 |