貴方に花束を









なんだって自分の誕生日に仕事だよ。

何となくそう思ってしまう。

それでも、俺はボクシングをしていて、でも、ファイトマネーだけじゃやっていけなくて、店の手伝いをするしかない。


溜息をひとつ吐くと人の気配がして焦る。

さすがに客の前で溜息は良くない。

そう思っていつもの営業スマイルを浮かべながら顔を上げると、

「腐ってるねぇ...」

「うるせぇ。」

ウチの常連客のがいた。

は親の遣いとかで良く店に来てたから、ガキの頃からお互い知っている。

「お客に対してそんな口きくのぉ?」

「これは失礼いたしました。で?どういったご入用デスカ?」

「花束作ってよ。」

「花束ぁ?...何の花がいいんだよ。」

「達也の好きなヤツ。」

「いや、俺の好きなヤツじゃなくてさ。花束やるやつの好みとか知らねぇのか?」

全く呆れる。

「う〜ん...」

頬に手を当てて悩んでいるみたいだけど答えが出そうも無い。

「相手の性格とかは?」

「ヘタレ!」

間髪入れずに答えてくる。

...よっぽど自信を持って『ヘタレ』って推薦できるんだろうな。

「んじゃ、好きな色とかは?」

「知らない。...あ〜、でも緑色とか好きそうだな。」

緑か。緑色の花は少ないけど、花束作りゃ必ず入ると言っていい色だよな。

「で、そいつはとの付き合いは長いのかよ。」

「長いねぇ...」

しみじみと言う。

まあ、付き合いが長いなら多少の外れも大目に見てもらえるんじゃないか?

そう思っての言ったとおりに俺の好みで作ることにした。

「予算は?」

「どれくらいが相場?」

「まあ、...5000円くらい出せ。あとはサービスしてやるよ。」

「うわぁ、達也がいい男に見えてきた。」

「ああ、そうかよ。男...に、やるのか?」

「男?ああ、うん。男だね。まあ、達也の好みで作ってもらって外れはないと思うよ。」

しっかし、こいつと付き合う物好きなんていたんだな...

まあ、俺の作った花束でが振られるのは、何だか俺としてもいい気分じゃないから気合を入れて作ってみる。


「達也って器用だよねぇ...」

感心したみたいにが言う。

「そうか?...よし!これでどうよ?」

我ながら自信作。これでその男がを振りやがったら俺が許さねえ!!

「では、こちらが代金になります。」

「毎度あり。あ、メッセージカード書くか?」

「いいの?」

「ああ。そこにあるペン、適当に使っていいから。カードはどれにするよ?」

「達也はどれがオススメ?」

「俺?これかなー。まあ、何だっていいんだけどよ。」

は俺が指差したカードにメッセージを書き始めた。

内容が気になるけど、見るわけにもいかないからな...


「よし、でーきた。ありがとね、達也。何から何まで。」

「いいってことよ。ま、今日のデート楽しんで来いよ。」

「デート?誰が?」

「...お前、その花束は何のための物だよ。」

こいつは何考えてるのかさっぱり分からない時が良くある。

「花束が何のためのものかって?そりゃ、決まってるでしょ?」

そう言っては花束を抱えなおして俺に差し出してきた。...何だ?

「誕生日おめでとう、達也。」

今の状況が理解できないで呆然としているとが俺の手を取って花束を持たせて

「ね?達也の好みで外れはなかったでしょ?それじゃあね。また来るわ。」

悪戯っぽい笑顔と共にウィンクを投げて帰っていった。


俺は、自分が貰う花束をあんなに気合を入れて作ったのか?

それよりも、俺は自信を持って『ヘタレ』って推薦できるヤツなのか?!


ふと、メッセージカードが目に入る。

もう、俺が貰ったものだから見てもいいんだよな?

カードを取り出して広げると


『HAPPY BIRTHDAY!!

今年こそ、いい恋ができるよ!』


と全く以って余計なお世話が書いてあった。


でも、やっぱりに祝ってもらえたのは嬉しくて、つい、頬が緩んでしまう。

誕生日の仕事ってのも悪くない、なんて思う俺は現金だろうか?




微妙に祝えてないキム兄さんの誕生日。
どうしてもキム兄さんに自分への花束を作っていただきたくて...
まあ、何はともあれ。
誕生日おめでとうございます、キム兄さん!!

桜風
04.10.10


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