| インターホンが鳴ったためは玄関に向かう。 ガチャリとドアを開けると 「メリークリスマス!!」 という声と同時にクラッカーが鳴る。 クラッカーのパンッという音に続いてコンッという小気味のいい音がした。 「どないしたんや?」 クラッカーを鳴らした張本人、千堂武士が心配そうにこの家の主、の顔を覗きこむ。 俯いておでこを抑えていたはゆっくりと顔を上げて千堂に笑顔を向ける。だが、千堂はその笑顔を見て思わず後ずさった。 「メールークリスマス。それはいいわ。イヴだけど...でもね、クラッカーは人に向けてうってはいけないって取説にも書いてあったでしょ?!」 は千堂の頬を抓りながらそう言った。 そう。先ほどのコンッという小気味のいい音はのおでこにクラッカーの蓋が命中した音だったのだ。 至近距離だったし、予想外の出来事だったため避けられるはずがない。 「そ、それはすまんかったな。痛かったんか?大丈夫なん??」 素直に謝られこれ以上何も言えなくなったは「どうぞ」と言って千堂を中へと促した。 「ところで、千堂君。突然どうしたの?」 既に勝手知りたる自分の家で寛いでいる千堂にコーヒーを入れながらは声を掛けた。 「『どうしたの?』て、クリスマスイヴやろ?と一緒に過ごそ思うて来たんやんか」 千堂は拗ねたように口を尖らせる。 たしかに、今日はクリスマスイヴだ。しかし、 「でも、千堂君。この前、今日の予定を聞いたら練習があるって言ってたじゃない」 勿論、だって千堂と共にクリスマスイヴを過ごしたいと思っていた。練習があると言われて仕方なく諦めていたのだった。 ケーキなど、クリスマスの用意をすると余計に寂しくなりそうだからクリスマス的なものはこの家に何一つ置いていない。 「あのとき、『24日、何か予定ある?』って聞いたんやろ?『クリスマスイヴに予定ある?』て聞いてくれたらワイかて別の答え方しとったわ。...ワイ、今日来たの迷惑やった?」 沈んだ千堂には慌てて 「そんなこと無い、そんなこと無いよ!むしろ、とっても嬉しい。...でも、この家。今、何も無いんだよ。ケーキもシャンパンも、ご馳走も。..千堂君へのプレゼントも」 今度はが沈む。折角大好きな人と共に過ごせるクリスマスなのに、何も無い。 せめてプレゼントだけでも用意してたら違っていたかもしれない。は段々泣きたくなってきた。 テーブルを挟んで座っていた千堂が立ち上がり、を後ろから抱きしめ、 「ケーキもシャンパンも、ご馳走も無くてもええ。と一緒におれることが何よりの最高のプレゼントや。それで、が笑うてくれてたら言うことないで?」 頬を伝うの涙を親指で拭ってやる。 は袖口で涙を拭き、千堂の腕を解く。 千堂と向かい合うように座り直して精一杯の笑顔を浮かべた。 「ありがとう、千堂君。私も千堂君と一緒に過ごせる時間が何よりも宝物だよ」 そう言って千堂に抱きつき囁いた。 「メリークリスマス」 |
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