| 年が明けて昼頃、さんの家へ行ってみた。 元旦だし、実家に帰ってるかもしれないけど、まあ、その時はその時だ。 彼女の家のチャイムを押すと 『はい』 と彼女の声が聞こえてきた。 「俺だけど」 『一郎くん?!ちょ、ちょっと待ってよ』 家の中の『ドタバタ』という表現がぴったりな音が近付いてきてがちゃりとドアが開く。 「さあ、どうぞ入って。ちょっと散らかってるけど」 と彼女が出てきた。 ひょいと家の中を覗くと『落とせるもの倒せるものは、全て落として倒して来ました』という形跡がある。 『ちょっと散らかってるけど』じゃなくて『今散らかしたけど』の間違いだろ? さんはこれで『年上としての余裕を』とか思ってるみたいだから、なんと言うか、可愛い人だと思う。 「じゃあ、お邪魔します」 自分の落としたもの、倒したものを元に戻しながら部屋の奥へ入っていった彼女に続いて家の中に入る。 「今日はどうしたの、一郎くん。お父さんは?」 「家で寝てるよ。寝正月ってのも何だか勿体ない気がしたからさんに逢いに来ただけ」 彼女は驚いた顔をしたあと、クスクスと笑い始めた。 「何だよ」 「いや。君は本当に予告無しで来るね。私がいなかったらどうするつもりだったの?」 「まあ、適当に散歩して帰るつもりだったけど、居たんだから問題ないだろ?」 そりゃそうだ、と言いながら彼女はお茶を淹れてくれている。 「そういえば、さんは初詣には行ったのか?」 「まだだよ。三が日は人が多いからね。それが過ぎてからいこうと思ってんの。一郎くんは?」 「俺は行かないから。神頼みはガラじゃないし、それで何とかなるものってないから」 「...初詣って、願掛けに行くものだっけ?私は誓いを立てに行くものだとばっかり思ってたよ」 は? 神社って神頼みしに行くところだろ? 『学業成就』とか、『良縁』って言ってるじゃないか。 それなのに、 「誓い?」 「そう。違うの?今年はこんな年にします!って神様に宣言しに行くの。私はずっとそうだったんだけどな」 何か、いつもズレた事をやったり言ったりしてる人だけど、でも、これは 「いいな、それ。それなら、俺も初詣に行こうかな」 「本当?じゃあ、一緒に行こう?4日くらいなら人も減ってるだろうし。どうかな?」 彼女が嬉しそうに笑う。 良く考えたら彼女はあまり我侭を言わない。それこそ、『年上としての余裕』に拘ってるんだろうけど、俺としてはもっと我侭を言ってくれても構わないんだけどな。 そうしたら、彼女のこの嬉しそうな笑顔がもっと見れるのに。 だから、俺はせめて誓ってみることにした。 『彼女の笑顔を守る』って。 |
ブラウザバックでお戻りください