| 「来たでー!」 「帰れ!!」 ドアを開けた千堂が挨拶代わりにそう言い、その瞬間宮田が鋭く返す。 「何や、宮田!この間はこのワイに『スパーの相手をしてください、お願いします』って泣きついたくせに」 「...あー、ほんとにお前馬鹿だな。というか妄想癖があるんじゃないか?とりあえず、大阪に帰れ」 いつも静かで、有体に言えばクールな宮田は千堂が来るとどうにも少し別人のようになる。 それが良いのか悪いのか... 「あら?」 ジムのドアを開けると、見慣れた、と言って良いほどこのジムに顔を出す人物が居たため、は思わず首を傾げる。 「おー、。久しぶりやな!相変わらず別嬪さんやな」 さらりと褒め言葉を口にする千堂を、正直なところ宮田は羨ましいが、そんな本音は絶対に口にするつもりはない。 千堂の褒め言葉だっては「ありがとう」と軽く流している。 「でも、千堂くんは先月も来たでしょう?こんなに頻繁に来て大丈夫なの?」 苦笑しながらが言う。 「大丈夫や!柳岡はんから許可を貰うとる!東京で練習するのも悪ぅない、ってな」 その自信満々の言葉が逆に胡散臭い... 宮田は物凄く不審な目を向けているが、彼にそんな目で見られても痛くも痒くもない。 「あ、宮田くん。そろそろ時間じゃない?」 ジム内の壁掛け時計が目に入ったがそう言った。 「ああ、そうか。ありがとう」 「ん?何や。ロードか?はよ行ってこい」 しっしと手で払う仕草をする千堂をじっと見た宮田は、「お前も来い」と腕を引いてジムを後にする。抜け駆けさせてたまるか。 「何でや!何でワイがこのタイミングでロードに行かなあかんのや!!」 ナチュラルウェイトの宮田の力はそこそこ強く、つかまれた腕を簡単にはらうことが出来ないため、千堂は引きずられるようにジムを出て行った。 「あの2人ってホントに仲良いわよねぇ...」 水と油のように相容れない存在のあの2人の様子はの目には可愛く映っている。 本人たちがそれを耳にしたらそれこそ2人揃って全力で否定するだろう。そして、そんな2人を見ては改めて仲が良いと思うに違いない。 悪循環だ... ジム内の練習生を含めてトレーナーやついでにの父親である会長もそう思うが、誰もの考えに訂正を入れたり、あの2人にアドバイスをしようとはしない。 だって、いろいろと面倒くさそうだから。 ザッザッザと同じ速さで2つの地を蹴る音が夕日の土手に響く。 「って、何で誘っといて何も話さへんのや!」 「お前とする会話なんてないからに決まってるだろう」 「なら誘うなや!!せっかく、邪魔者が居ない間にと...」 宮田はちらりと千堂を見て、はぁ、とため息を吐く。 「何や、感じ悪い!」 「...知ってるか?さんって俺とお前が仲良しって思ってるらしいぞ」 「うわ、けったくそ悪い」 「それについては、同感だ」 宮田はそういってまた走り出す。 「で?それがどうしたんや?」 宮田は再び千堂をちらりと見ただけで言葉を返さなかった。 それについて、隣を走る千堂は何かほえていたが、宮田の耳には届いていない。 「宮田くんって、ライバルがいっぱい居るから、大変だけど..楽しい?」 以前、不意にに聞かれた。 「ライバル、ですか?」 「そう。同世代の同じ階級の人、多くない?幕ノ内くんとか、最近良く遊びにくる千堂くん。あと..少し下だけど、板垣くんとか今井くんとかも?」 名前を挙げられて、そうかな、と少し悩む。 「そう..ですね」 「けど、ライバルが多いって大変かもしれないけど、良いことなんでしょう?」 宮田は不思議そうな表情を浮かべてを見た。 「だって、ライバルって、漢字で書くと『好敵手』でしょ?何か、悪い感じしないじゃない?ライバルは居てこそなんだろうねー。相手が強敵だったら物凄く大変だろうけど...」 少し嬉しそうにそう言ったに宮田は困ったように笑う。 の言うことは間違いだと思わない。けど、やっぱり強敵が居るとそれはそれで大変なものだ。 もちろん、それはボクシングに限って言えることではない。 「どうかした?」 首を傾げて不思議そうに自分を見上げるに苦笑して「何でもないですよ」と返す。 とりあえず、今現在自分にとっての最強の敵はこの目の前に居るの鈍感さだったりもする。 結構頑張っている方だというのに、一向に気づいてくれない。 「さんって」 ポツリと宮田が呟く。 「ん?」とが先を促すため、宮田は苦笑しながら言った。 「さんって最強だと思いますよ」 宮田の言葉に一瞬きょとんとしただが、 「良くわかんないけど..ありがと」 と満面の笑みで礼を言う。 ああ、ホント最強だな... 宮田はまたしても川原に敗北を喫したのだった。 |
リクエスト内容
『川原の娘設定で千堂とVS的な話』
リクエストありがとうございました!!
桜風
09.7.5
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