| 「木村さんってバイクも乗るって本当ですか?」 が純粋な瞳で木村を見上げてそういった。 彼女はこの商店街の子ではない。ここから少し離れた住宅街に家があるという。 しかし、2週間に1回のペースでこの商店街を通る。 学校からの帰り道でもこの商店街を通ると少し遠回りになるのだが、何でも、彼女のお母さんが1年位前からフラワーコーディネートとガーデニングに嵌ったらしい。 テレビの教育番組の講座を見て昼間に結構時間があるからと手を出してみたら、かなり嵌ってしまったと前にが話していた。 「お母さんって変なところ凝り性なんだもん」と苦笑しながら彼女は言った。 そこで、彼女の母親は近所で『種類が多くてかなりいいお花が揃っている良心的な花屋さん』の噂を耳にしてにお使いを頼むようになった。 自身、最初は興味なかったけど、木村の母親が親切に花のことを教えてくれるし、その息子の木村は自分のような中学生の青臭い人生相談にも乗ってくれるので、木村園芸店に足を運ぶ日は結構楽しみになってきている。 そして、木村も最近馴染みがない世代と話が出来るのが楽しくて彼女が買い物に来ると店先まで出てくることが多かった。 そんな中、店番の休憩中、と言っても店先でペットボトルに口をつけてちょうど水を飲んでいるタイミングで彼女があんなことを聞いてきたので木村は盛大にむせて蹲る。 慌てたは木村の背中をさすっている。 「ありがとう」と言って木村は姿勢を戻した。 「えーと、ちゃん?」 「はい!」 やはりまっすぐ自分を見上げているの瞳は何かの期待に満ちていた。 「誰に聞いたのかな?」 それは肯定を意味するが、まあいい。 「この商店街のご近所さんです!」 満面の笑みで彼女が言った。 ご近所さん... 昔、と言ってもそんなに遠いものではないが、昔自分はこのご近所さんにかなり迷惑をかけた。 その当時、はまだ小学生だったはずだ。 今の年齢から逆算すればギリギリ小学生となるはず... まだこの商店街に足を踏み入れることはなかった。 何せ、彼女の学区とここは別だから。 中学にあがってやっと学区内というものに入る。 「まあ、うん。乗ってた..かな?」 決まりが悪そうに木村が言う。 「わあ!凄いですね!!」 尊敬のまなざしを向けられて物凄く胸が痛い。 バイクに乗っていたというか..バイクに置いていかれていたと言うのが正しいのであって... 当時のその様子を目にしたことのない者には全く想像のつかない状況だ。 バイクだけが先に走って行くだなんて... 「で、えーと。何でバイクの話?」 木村は詳しく聞いてみるとにした。 「今度乗せてください」 が言うと「ダメ」と間髪入れずに木村が却下する。 「えー!何でですか??」 興味があるから乗せて欲しい。そう言ったのに、言った瞬間却下された。 ぷくぅと膨れているをちらりと見て木村は視線をそらす。 「危ないから」 それは自分の運転技術のことではない。 今はちゃんと教習所に通った甲斐もあってあんなバイクの暴走はない。後ろに人を乗せてもそこまで危険でもないかもしれないが、それでも四輪に比べて二輪は危険だ。 機動性があるので時々乗るが、最近誰かを乗せたということは記憶にない。 膨れっ面のは本日注文した花を受け取って「木村さんの意地悪ー」と恨みがましげにそう言って帰っていった。 それから数日後。 にいわれからというわけでもないが、朝、少し早い時間にバイクに乗って出かけていた。 ふと、見慣れた少女を目にした。 彼女は交番から出てくる。 昔のくせというか、そういうことで出来れば近寄りたくない場所だったので、彼女がそこから離れるのを待って声を掛けた。 「ちゃん?」 「あ!木村さん!おはようございます!!」 彼女は元気よく頭を下げた。 しかし、今日は学校がるはずだろう。 だが、荷物が多いような... 「どうしたの?今日、学校は??」 木村が聞くとは困ったように笑う。 「夏休みですよ。ねえ木村さん、今何時ですか?」 木村は腕時計を見せた。 「あー、やっぱり...」 そう言って方を落とすにどういうことかと説明を求めた。 今日はの所属している部活動の合宿だったらしい。 学校からバスが出るのだが、今から行っては間に合わないそうだ。 「諦めます」 そのパンパンに膨れたスポーツバッグを目にして木村は溜息を吐いた。 彼女が部活動をしているのは普段の会話から知っている。文化系なのに合宿があるなんて珍しいとも思うが... 木村は予備のヘルメットをに渡した。 「木村さん?」 「それ被る」 指をさして木村が言い、は慌ててそれを被った。 「今回は緊急事態だからな」 そう言ってバイクのエンジンをかける。 はぽかんと木村を見上げていた。 「たぶん、ギリギリ間に合う。間に合わなくても、合宿所まで送ってあげるよ。だから、乗る!」 木村に言われて「はい!」とはその後ろに乗る。 遠慮がちに木村のシャツを掴んだに「しっかり掴まってないと落ちるかもしれないよ」と言うと彼女は慌てたように木村の腰に腕を回してぎゅっと掴んだ。 先ほど、交番から小さな子供が出てきた。母親が迎えに来たようだ。 きっとは迷子を交番に届けたからその分遅れてしまったということなのだろう。 バイクが走り始めるとは驚いたようにさらに強く木村にしがみつく。 朝のラッシュが終わって交通量が落ち着いた車道を木村のバイクが滑るように走っていった。 |
リクエスト内容
『年下ヒロインで 、木村のバイクの後ろに乗せてもらうほのぼの甘な話』
リクエストありがとうございました!!
桜風
09.7.19
ブラウザバックでお戻りください