| 毎日暑い日が続く。 何だって、こんな日にクラス会か! そう思いながらはてくてくと会場となっている居酒屋に向かった。 今日は中学のクラス会。 卒業して以来、初めてのクラス会だ。皆がお酒が呑めるようになったから、と幹事から聞いた。 お酒が呑めないとクラス会をしないと言うものどうだろう... とはいうものの、も随分と訓練を積んで呑めるようになった。周囲には「たしなむ程度」と言ってはいるが、実際のことについてはナイショである。 「えーと?」 送られてきた案内はがきを見て周囲を見渡した。 地元を離れて少ししか経っておらず、街並みはそんなに変わっていないのだが、地元に居たときはこういった繁華街には来た事がなかったので正直地理に自信がない。 「お?か?!やないか!!」 振り返ってぎょっとした。 何だ、この人?? 「あー、えー...どなたでござりましょうか??」 うっかり変な日本語になったが、そこは一々気にしていられない。 『どなたでござりましょうか?』と聞かれた彼はきょとんとしてくしゃっと笑った。 「何や、冷たいなー。元クラスメイトやないか」 誰だ? 昨日ちゃんと卒業アルバムを見た。アルバムを見て予習をして... 誰だ?? 自分が昨晩インストールしたクラスメイトの人物名鑑を検索しても出てこない。 でも、もう一度『どなたでござりましょうか』と問うことは出来ない。 「ワイや。千堂や。覚えてへんか?」 「はあ?!」 覚えているとかそういうレベルではなく、本人に本人と言われても疑惑の眼差しを向けてもおかしくない。 「何で、千堂くん?!」 「何でって言われても。ワイはワイやし...」 困ったように笑う千堂には益々混乱した。 え、こんなに穏やかだったっけ?古い表現するなら、尖ったナイフみたいだったのに... 「丸くなったなぁ...」 思わず出た言葉には慌てて口を塞ぐ。 目の前の千堂は怒るでもなく、逆に笑った。 「最近よう言われんねん。まるでワイが年寄りみたいやから『言うな』て言うてるんやけどな」 全くあのときの面影がない。いや、面影はある。が、『=』で結びつかないのだ。 「ほへー」と感心しているに千堂はまた苦笑した。 「はよ行かんと遅れるで」 千堂に言われて自分が何故ここにいるかを思い出したは頷いてまたはがきを見る。 「こっちや」 自信満々に千堂が言う。 「詳しいの?」 「まあ、こう見えて結構連れてってもらっとるんや」 「ほへー」とまたは感心して声を漏らした。 「っていうかさー。自信満々に案内してくれて真逆に向かったってどう思う?!」 が笑いながら言う。 結局千堂がズンズンと進んでいった先には目的地はなくて、仕方なくそこを行き交うサラリーマン風のおじさんに教えてもらった。 地図を見せると彼は笑いながら「逆や、姉ちゃん」と言って、丁寧に教えてくれた。 先ほど千堂とが再会した場所から50メートルも離れていなかった。もしかしたら看板が見えていたかもしれない。 お陰で2人揃って遅刻したものだから元クラスメイト達に弄られてしまったのだ。 随分とアルコールを摂取して気持ちよくなったが周囲のクラスメイトにそう零した。 「何や!ジブンかてほけほけしながらついて来たやんけ!」 の笑い声とその内容が耳に届いた千堂がムキになって返してくる。 「だって、慣れてるって言われたら普通ついて行くやん。千堂くん、ずっと地元や言うてたし」 「やかましい。大体なー!!」 そこから言葉の応酬が始まった。 やはりこういうことになれば女性であるの方に分があり、千堂は劣勢に立たされていた。 あまりにも延々と言葉を紡いでいたので喉が渇いた千堂は目の前のグラスを煽る。 カクテルのようで、甘かった。 眉間に皺を寄せて「何や、これ」と呟くと目の前のが「あーーー!!」と声をあげた。 「何や!」 「勝手に飲まんといてや!!」 の言葉に、自分が今煽ったグラスは彼女のものだったと気が付いた。 そして、突然冷静になってしまった。 「ちょ...!や、あの..紅くなるのはやめてもらえへん?」 こっちまで恥ずかしくなるわ...とが続ける。 「紅くなってへんわ!」 「何言うてんねん。鏡見てきたらええわ。トイレ行ってき!」 「ジブンかて紅くなってんやぞ!人のこと言えへんわ!!」 第2ラウンドに突入。 2人の様子を見守る元クラスメイト達の視線は温かかった。 「いやいや、熱帯夜やねぇ」 「ほんまになー」 そんなことを囁かれていることに気が付かない2人の口げんかはそれから当分続いた。 |
桜風
10.5.1