| 何気なくつけていたテレビで、何故かそんな話題になっていた。 どうやらバラエティ番組のようで、結局つけていただけで見ていなかったからその前後のやり取りとかは分からない。 「月が綺麗ですね」 頭の中に残った言葉だ。 空を見上げる。 見事な五月晴れ。 「どうしたの?」 隣を歩くが声をかけてきた。 「ああ、いや...」 曖昧にそう答えた宮田はチラとを見た。 その視線に気付いたは宮田を見て小さく首を傾げた。 「月が..綺麗だな」 言ってみたが、同時にしまった、と言葉を訂正したくなる。 先ほど空を見上げたばかりじゃないか。今は昼間じゃないか。 は空を見上げた。 「ああ、本当だ」 「え?」 驚いた宮田は改めて空を見上げる。 「真昼の月」 「あ、ああ...」 「しかも満月みたい」 「ああ」 曖昧な相槌しか打てない。 何せ、宮田の言いたかった「月が綺麗」は何気なくつけていたテレビで放送されていたバラエティ番組の1コマで取り上げられた意味の言葉なのだから。 「ねえ、一郎くん」 「なに?」 「月が綺麗ね」 それはさっきも... そう思ったががニコニコと笑っている。これは自分の反応を待っているという証拠だ。 もしかして、とは思うがやはり確証は持てない。 「あのね、言わなかったっけ?」 「なにが?」 「わたし、文学部出身」 その言葉に宮田は「あ」と呟く。 「えっと、じゃあ。今のさんの言葉の意味は?」 「一郎くんが先に言うべきだと思うわよ?」 笑顔で言われて宮田は暫し俯いて黙り込む。そんな彼の様子を苦笑しながら眺めていただったが、そろそろ気の毒になって先ほどの言葉を訂正しようと口を開いた。 しかし、それと同時に宮田は顔を上げて「好き、です」という。 「あら、一郎くんは『I love you』も『I like you』も同じなの?」 思わずからかってしまった自分を心の中で叱咤したは、それでもいつもどおりの表情のままである。 対する宮田は少し怯んだ。 からかわれているのわかっているが... 宮田は空を見上げる。 「さん、月が綺麗ですね」 「そうね。わたしもそう思ってるわ」 そう言っても空を見上げた。 真昼の月も良いもんだ。 「さん」と呼ばれて視線を宮田に戻すと彼が手を差し出している。 「手を、繋ぎませんか」 ほんの少し赤くなって宮田が言う。 「喜んで」 にこりと微笑んでは手を重ねた。 |
桜風
11.5.1
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