Special Day





今日は天気もいいから散歩日和。


てくてくと歩いて今の季節の空気を満喫する。

そうやって少し歩いていると

さん。」

後ろから声をかけられた。

振り返って見ると、そこには今日も今日とて走っている一郎君。今日、偶然にも彼に会えたのは結構嬉しい。

「一郎君、お疲れ。」

私の隣まで来た彼は私の歩調に合わせて歩きはじめる。

「ああ、まあ。...さんはどうしたんですか、こんな所で独り。」

「まあ、所謂冒険ってヤツよ!」

握りこぶしを作って遠くを見ながら力強く言ってみたら、

「散歩、ですか...」

まあ、流されると思って言ったんだけど、溜息交じりで流されるとやっぱり寂しいよね〜。

そのまま何を話すでもなく、てくてく歩く。


公園が見えたからそこへ入っていって何となくベンチに腰掛ける。

ふと、気付く。

一郎君がいない...

練習にでも戻ったかなと思っていると頬にひんやりと冷たいものが当てられた。

「うひゃあ!」

思わず変な声が出る。振り返ると一郎君が背中を向けて肩を震わせていた。

「こぉら、驚いたでしょ?」

少し睨んでみるけど、まだ彼がいるのが嬉しくてたぶん私は笑ってる。

一郎君はさっきの私の反応がよっぽどツボに嵌ったらしく、まだ少し笑いが残っているみたい。

「すみません。随分歩いたから暑いでしょ?どうぞ。」

そう言ってさっき私の頬に当てた缶を渡してきた。

「一郎君のは?」

「俺はいいです。気にしないでください。」

そう言われても気になるけど、でも、私が気にしたら一郎君の方がもっと気にするかもしれない。

だから、折角だし、飲むことにした。

一口飲んだ私に、

さん、どうですか?」

一郎君が聞いてくる。

「これ、何?凄く微妙だね。」

「そうですか。ジュースとかってあまり飲まないから適当に新製品ってあるの買ったんですけど...」

「飲んでみる?」

「...いえ、いいです。」

少し考えた一郎君がそう答えた。

そう言われたら私が独りで飲むしかないから飲んでいるとまた隣に座っている一郎君が声を殺して笑っている。

...だから、このジュースは微妙な味なんだって。

たぶん、微妙な味のジュースを飲んでいる私の顔は笑えるんだろうけど。


何とか全部を飲み終わって一息ついていると一郎君が

「やっぱり、さん。味をきいてみてもいいですか?」

なんて言う。

もう、頑張って全部飲んだのに...

「もう全部飲んじゃったよ。」

そう言うと一郎君は

「ええ。さんが全部飲んでても構いませんよ。」

と言いながら悪戯っぽく笑って、突然口付けてきた。


「美味しいじゃないですか。」

そう言った彼は何とも楽しそうで、いつもは大人びた感じの一郎君が少し子供っぽく見える。

でも、でも、突然の出来事に私自身が付いていけずに呆然としていると

さん、誕生日おめでとうございます。」

そう耳元で囁いて隣に座っていた一郎君が立ち上がる。

「それじゃあ、俺、もう戻らないといけませんから。さんも、暗くなる前に帰った方がいいですよ。」

なんて言いながら走っていった。


でも、まあ...

こんな誕生日も有りだと思う。



この年上ヒロインは以前出演なさっている彼女とは別人です。
そっくりだとかそういうのは気のせいということで(笑)
何だかちゃっかり者(?)の一郎さんでした。


桜風
04.10.9
04.12.31再掲


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