Blue





日が傾いた頃、あたしは自転車に跨り、土手を目指す。

きっとこの時間に走っているはず。

ちょっと前にそう言ってたから。

でも、自転車を走らせても姿が見えない。

...もしかして、反対の土手?!

立ち漕ぎをしながら川を挟んで向こう側の土手も見渡しながら走る。

いない...

やっぱりこういうのって駄目だったのかな〜。

「さっきから何やってるんだよ」

突然後ろから声を掛けられて驚いて振り返ると自転車のハンドルが定まらずにフラフラとなり

「ああー...」

自転車が土手から川べりの広場までズザーと空しく滑り落ちた。

「危ないな」

因みにあたしは一郎が支えてくれました。

「お前、相変わらずとろいのな」

「失礼な!後ろから前触れもなく声を掛けてきた一郎が悪いんじゃない!!」

一郎は「はいはい」と返事をしながらパーカーを頭から下ろした。

「で?こんな所で何やってたんだよ」

「捜し物」

「チャリに乗ってか?そんなに大きいものを探してるのか?」

「そ。これくらいの」

そう言いながら私は空中に一郎の輪郭を手でなぞった。

「俺くらい?」

眉間に皺を寄せて一郎が聞き返す。

「ジャスト一郎くらい」

「なら、俺だろ?何だよ」

あたしの言いたいことが分かったらしい一郎。

うん、流石だ。

あたしはすぐには答えずに土手を降りて愛車を起こしに行った。

一郎もそれに続いて、ついでに私の愛車を起こしてくれた。

「で?俺に一体何の用だったんデスカ、サン?」

「気持ち悪いから、『さん』付けしないでくれます、一郎さん?」

「...確かに気持ち悪いな。で、何だよ。用がないなら俺は練習に戻るぞ」

そう言って一郎はあたしに背中を向けて土手を登ろうとした。

「一郎ってさ、『青』だね」

「は?」

一郎の後ろ姿を見て何となく思った。

「青?...それって挑戦者の色なんだけど」

微妙に嫌な顔をしている。

「いや、そういう意味じゃないんだけど。てか、挑戦者って青なの?」

一郎はこれ見よがしに深ーい溜息を吐いて、

「お前、何度俺の試合を見に来てるんだよ!いい加減気づけ!!」

と言って来た。

「面目ない...」

「それはともかく。俺が青ってどういう意味だよ?」

「何となく。冷めてるというか...クールというか...」

「まあ、よく言われるな、それ。でも、それって今更って感じしないか?」

「する。すっごい今更」

あたしの返答を聞いて一郎は苦笑をして肩を竦めた。

「じゃあな。気をつけて帰れよ、

そう言ってパーカーを被り、今度こそ一郎は土手を駆け上がった。

「一郎!!」

すっかり忘れてた。

またしても一郎は足を止めて振り返る。

「これ、あげるよ。おめでとう!!」

そう言って鞄の中に入れておいたものを一郎目がけて投げた。

ちょっと逸れたけど一郎はそれを難なくキャッチしてちょっと箱を見た後、またしてもパーカーを下ろして

「サンキュー、!」

とその箱を持っている方の手を軽く上げた。


あ、そうか。違う。

一郎は水の青じゃない。

空の青だ。

真っ青な青空。

そんなに爽やかじゃないけど。

あったかいところも、寒いところも全部持ってて、でも、見てたら落ち着いて...


「じゃあな、!」

一郎は練習に戻っていった。



ついでに。

ああやって絶対に態々パーカーを下ろして話をするのはあたしにだけ。

一郎は、どんなに曇っててもあたしには飛び切りの青空を見せてくれる。





お誕生日おめでとうございます、一郎さんッ!!
今年は色シリーズ。
前から言ってるけど、一郎さんは青。
冷たいとか、青にはそんなイメージがあるかも知れませんが、
でも、青空は見てて気持ちがいいと思います。
ま。でも、爽やかではないよね、一郎さんは(笑)


桜風
05.8.27


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