冬の日の『あったかい』





目覚ましが鳴る前に目が覚めた。

ベットから降りると思わず「ひゃっ」と声が漏れるほど床がひんやりしたてから慌ててカーテンを開けてみた。


昨晩、寝る前には雪がしんしんと降っていたが、それからすぐにやんだのか、思ったほど積もってなくて、アスファルトはうっすらと雪化粧。

今日は出かける予定だけど、この程度なら電車は大丈夫かなと少し安心した。

ほっとして吐いた息は白く、寒いことに変わりないとぶるりと震え、いそいそとエアコンのスイッチを入れる。

部屋が暖まるまでもう少し布団の中にいよう。



寒い日は出掛ける準備をするにも時間がかかる。これはもう仕方ない。

慌てて家を飛び出し、発車のアナウンスが流れる電車に駆け込み乗車。

『駆け込み乗車は危険ですからおやめください』と少し不機嫌な駅員さんの言葉に肩を竦めて心の中で「ごめんなさい」と謝罪する。

心は急くのに、電車は積雪のための徐行運転。

雪なんてうっすら積もっただけなのに...

けど、安全第一に異論を唱えるわけにはいかず、少しだけイライラしながら目的の駅につくのを待った。


電車の扉が開くなりホームに飛び出して階段を駆け降りる。

改札を抜けると待ち合わせ場所には、白い息を吐きながら駅から出てくる人の流れを見ている彼、宮田一郎くんの姿があった。

「一郎くん!」

駆けながら手を上げて名を呼ぶと彼もこちらに気がついたらしく、軽く手を上げた。

「ご、..めん」

少し遅れた。

普段走らないからこの程度で息が切れる。ちょっと恥ずかしいなぁ...

「大丈夫ですか、さん。電車は徐行運転だったみたいですね。駅員さん大変そうでしたよ」

苦笑して彼が言う。

電車の遅れに対して利用者が文句を言ってたらしい。

まあ、わたしも心の中で文句を言ってしまった...ちょっと反省。

さん?」

少し首を傾げて不思議そうに名前を呼ばれた。

「あ、うん。行こうか」

促して鞄の中を漁る。

「あ...」

「どうかしたんですか?」

「手袋、忘れたみたい」

慌てて出て来たからなー...

家を出たときは手袋どころの話じゃなかったから気づかなかったけど。

「...だったら」

と呟いた彼はそっとわたしの手を取った。

「これでどうですか」

彼の耳が赤いのは寒さだけではないはず。

「ん。あったかい。これがいいわ」

そう返すと彼の口元が少しほっとしたように緩む。

「じゃあ、行きましょうか」

一郎くんの言葉に頷き、駅前広場を後にした。








桜風
2010/12/14 執筆
2011/04/24掲載
(Dream Battle11投稿作品)


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