秋桜




今日は友達とちょっと遠くまで出かけた。

行きは気が付かなかったけど、帰りの列車の中からコスモス畑が見えた。

秋風に吹かれてそよそよと揺れているコスモス。


ふと、あの人を思い出した。

いつも優しく微笑んで私を包んでくれる彼。

あの秋風を受け止めながら優しく揺れているコスモスと重なった。


何となく、彼に逢いたくなった。

時計を見るともう遅い。勿論帰る頃には彼の家のお店は閉まっている。

逢えなくても、せめてコスモスを家に飾りたいと思ったのに...



駅で友達と別れて一人家に帰る。

鍵を開けて中に入ると

「お帰り」

という声がした。

慌てて奥まで行くと月灯りの下私の好きな優しい笑顔の彼の姿がある。

「えっと...」

電気を点けながら言い淀む。

残念ながらこの状況が飲み込めていない。

「ごめんな?家の前で待っていようと思ったんだけど、近所の噂になると良くないと思ったから上がらせてもらったんだ」

ああ、だから電気も点けずにいたんだ。でも、何でウチに来たんだろう?

...約束は、してなかった、はず。もしかして、私が忘れてただけ?!

彼が突然吹き出した。

ちゃん、百面相をしてるよ。大丈夫、別に約束をしていたわけじゃないから。今日は何となくちゃんにこれをあげたくなっただけ」

そう言って彼が差し出したのはコスモスだけの花束。

それを受け取った私は当然に笑顔になる。

さっき突然逢いたくなった彼と、突然欲しくなったコスモスの両方が目の前に揃っている。

「ありがとうございます。私、コスモス大好きです」

「それは良かった」

彼は私の好きな笑顔を浮かべた。




貴方は知らないでしょ?

私の一番好きな花は、コスモスのような貴方の笑顔だって事を。

ね?達也さん。





『花シリーズ』と言わせて頂きましょうかねぇ。
それにしてもこのシリーズ。話が短いですね...
しかも、終わりかたが似てるっぽいし?
とりあえず、残るは一郎さんですなぁ。

桜風
04.10.11


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