アタリ 2





がカウンターに立っていると隣に立つバイト仲間が覗うように「さん」と声をかけてきた。

「んー?」

そろそろ品出ししておいた方が良いかな、と思いながら返事をすると

「宮田くんって知ってるよね?」

と聞かれた。

「比較的、同じシフトに入ることが多いかな?」

肯定すると

「怖くない?」

と間を置かずに聞かれた。

思わず苦笑。

「え?」と声をかけてきた彼女は驚いたようだが

「無口で無愛想なだけじゃない」

と返す。

「それ、普通『怖い』って言わない?」

非難するような目で彼女が言うがは「いやいや」と首を横に振る。

「怖い、には大抵得体が知れない、自分にとって未知である、というのがあるんじゃない?」

「は?」

「無口で無愛想な年頃の男の子って思ったらたまに面白いよ?」

しれっと返すと彼女は呆れた表情を浮かべた。



さん」

別の日、宮田と同じシフトに入っていた。

「んー?」

今日も仕事が終わったらアイスを買おうかと悩みながら返事をする。

さんって変人って噂、立ってますよ」

「あ、ホント?」

意に介す様子を見せないに宮田は呆れた。

「少しは反省して努力したらどうですか?」

「努力?何を??」

「周囲に、合わせる事?」

疑問系で返されては笑う。

「自分が出来もしないことを人にアドバイスするもんじゃないでしょう」

うん、やっぱりアイスを買おう。

今日は、チョコミントかな??

以前、チョコミントを休憩室で食べていたら宮田に呆れた表情を浮かべられた。

彼は「甘いんだか辛いのだかわからないそんなもん食べて美味いですか?」と聞いてきたのだ。

ミントを「辛い」と表現した彼が少しだけ幼く見えて可笑しかったのを覚えている。

隣に立つ宮田はの指摘に少し気分を害したようだった。

何せ、親切心で口にしたものだと言うのに笑い飛ばされたのだから。

「宮田くん、此処お願いね」

そういったに「俺がやっておきますよ」と軽く手を上げて奥へと向かった。

これこれ。

は頷いた。

宮田の何処が怖いのか、理解できないのはこういうときだ。

気が付くし、勿論、気配りも出来るのだ。

最初は確かにも宮田はちょっと近寄り難いと思っていたが、ある日を境にそんなことを思わなくなった。



その日は夜の時間帯にバイトに入った。

その当時は、まだ宮田とはあまり顔を合わせたことがなくて言葉も殆ど交わしていない。

そんな状況でのバイトだった。

夜のシフトに入ると、酔っ払いが入ってきたら骨が折れるぞ、と別の時間帯に聞いたことがあった。

そして、まさにその状況に陥った。

こともあろうに、カウンター越しのをナンパし、無理やり連れ出そうとしたのだ。

これは大ピンチと多少焦ったのだが、酔っ払いといえども相手は男で、力で勝てそうになかった。

「お客様、手を離してください」

そういったのはではなく、宮田だった。

先ほどまで裏で整頓していたのだが、いつの間にか店に出てきていた。

そして、何より驚いたのはその迫力で酔っ払いを退散させたことだ。彼は静かにそう言っただけなのに。

まだ高校生の小僧なのに、何だこの気迫。

「あの、ありがとう」

礼を言うに、「さん、在庫の確認してきてください」と宮田は返した。

つまり、カウンターは自分が引き受けるから落ち着くまで下がっていても良いと彼はそう言ってくれたのだ。

本人に確認していないが、タイミングと言い、声音と言い、そうだと思う。思い込むことにした。

かくして、にとって宮田は怖い人ではなくなった。









桜風
11.7.30


ブラウザバックでお戻りください