| 「またそんな甘いんだか、辛いんだかわかんないものを...」 今日はのほうが早く上がった。 しかし、宮田がなぜか休憩室にやってきたのだ。 「お、あたしが居ないと寂しいかね?」 からからと笑いながらが言うと彼はチラと彼女を見て溜息を吐いて部屋を出て行った。 「あら、ノーリアクション」 そう呟いてアイスを口に運んだ。 帰り道、日沈んだ後だというのに部活帰りの高校生らしき集団を目にした。 そういえば、宮田は彼らと同年代のはずだ。 「部活していないんだねぇ」 いや、実はまさかの将棋部とか?! そんなことを思うとちょっと可笑しくなってクスクスと笑う。 自分も結構得体が知れないといわれるが、宮田も私生活が見えない。 ただ、体格はいいほうだと思う。夏の半袖でドキッとした。中々素敵な腕をお持ちだ。 ある日、昼間に散歩に出た。 「あっちー」と呟く。 口に咥えているのはアイスの棒。 食べ終わったは良いが、ゴミ箱が見当たらない。仕方ないのでそのまま口の中に突っ込んだままなのだ。 「あー、疲れた」と呟き、土手に座り込む。 ちょっとふらふらしてきたと思ったのだ。これは巷で噂の熱中症かもしれない。 しかし、摂りたくても水分が手元にない。 ここは、アレか。その目の前に流れる川の水で何とかしろと言う神の啓示... 「さん?」 不意に声を掛けられて振り返るとジャージ姿の宮田が立っていた。 「天の恵み!」 そういったに一瞬だけ訝しげな表情を浮かべた宮田だったが彼女の顔色を見て宮田の顔色も変わった。 「ちょっとお使いしてきて」 財布を取り出しそうとしたが宮田はそれを受け取らずに 「スポーツドリンクで良いですね」 と言って駆けて行く。 ぐんぐん彼の背中が小さくなるのを眺めながら「若いって素晴らしい」とは呟いた。 すぐに戻ってきた宮田の手にあったのはコンビニの袋。 バイトで働いているコンビニの系列ではない。 「裏切り者ーって店長に言われるよ?」 笑いながら返すが宮田は応じずにペットボトルのキャップを捻って「水分補給してください」とに渡す。 袋の中からは氷も出てきた。 「とりあえず、日陰に移動しましょう」 そう言っての腕を引いて立ち上がらせ、彼女を支えて土手に降り、木陰に彼女を座らせた。意外に力強くて不本意ながらドキッとしてしまった。 「まったく、真夏に何やってるんですか。せめて帽子を被ったらどうですか」 まだまだ呆れているようだ。 「や、あたし夏には強いから」 「熱中症になった人が言っても説得力が皆無ですよね」 手厳しい。 思わずがぐぅと唸ったほどだ。 「まったく」と未だご立腹の宮田はの隣に腰掛けている。 「ね、宮田くん」 「何ですか?」 「君も帽子を被ってないよ?」 「すぐに戻るところだったんですよ」 ぶっきらぼうに返された。 あ、そっかと納得したは 「お手を煩わせて申し訳ない」 と頭を下げる。 「別に。知り合いが真っ青な顔で声をかけてきたら心配するでしょう、普通」 そんな宮田の返した言葉が少しくすぐったくて、は首を竦めた。 「ごめんね」 「いえ」 「ありがとう」 「どういたしまして」 の顔色が戻るまで宮田はただ黙ってそこに座っていた。 |
桜風
11.8.6
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