| 昼間の散歩は危険だと実感したはそれ以降、帽子をかぶるようにした。 バイトに行くときも距離はそんなにないし、日陰が多い道だが一応被る。 「感心ですね」 今日は入れ替わりのシフトだった宮田に声を掛けられた。 「あ、この間はどーも」 帽子を脱いでペコリと頭を下げる。 「いいえ」 そう返した宮田が「お先です」との横を通り過ぎようとしたところで彼女はその腕を掴む。 「何ですか?」 「お金、返してない!」 「良いですよ、別に」 「そんなわけにはいかない」 そう言っては財布を取り出してちょっと悩んだが、先日世話になったとき宮田が買ってきたものについてこのコンビニの定価で支払った。 「足りない?」 「一々覚えてないです」 「じゃ、それで手を打って」 「別にいいのに」と言いながら宮田はの握らせた小銭をポケットに仕舞った。 「あれ?お財布に仕舞わないの?」 「面倒くさいんです」 「ポケットからじかに小銭出されたら、どんな美形さんでも『わ、オッサン〜』って思うけどな」 がからかうように言うと 「さんって、たまに失礼ですよね」 と溜息混じりに言われた。 「『たまに』で良かったー!」 笑って言う彼女を、宮田も呆れたように笑って「お先です」と先ほどと同じことを言ってその場を去っていった。 それから暫く宮田と同じシフトでのバイトはなく、また、その前後もなかった。 季節が巡って雪が降るある日、宮田と久しぶりに会った。 バイトではなく、あの土手でもなく。思いもよらない場所だった。 「はあい!」 軽く手を上げて声をかけると宮田は驚いたように視線を向けてきた。 「...どーも」 「良かった!あたしのことを忘れたてなかった」 「そこまで記憶力は悪くないですよ」 肩を竦めて宮田が言う。 「宮田くんの制服姿って中々レアもの?」 「さんって、オッサン入ってますよね」 溜息混じりに言われる。 「此処最近、宮田くんに冷たくされてないから、そんな反応が懐かしいわー」 笑って言うと 「やっぱり変わってますね」 と呆れたように言われた。 「家はここら辺なの?」 がキョロキョロと周辺を見渡す。 「いいえ」と宮田は短く返す。 「ふーん...」 公園が近くにあって、住宅街の入り口のような場所だ。 「バイトはやめたの?」 気になっていたので聞いてみた。 「いいえ」 とやはり短く返される。 「ふーん」 相変わらず会話が続かないなぁ... だから、逆に会話が続くと一種の達成感を感じることが出来るのだろうが。 「ただ、当分休ませてもらっています」 おや?とは驚く。宮田が会話を続けようとしている。 珍しいな、と思ったがそれを指摘したらそこで会話が終了してしまうのでそのまま会話を続けることにした。 「じゃあ、復帰の予定はあるんだ?」 「一応」 「じゃあ、また一緒にレジ打ちしようねー」 「...さんって俺と同じシフトだったら結構休憩しているっての聞いたことがあるんですけど?」 誰だ、そんなことを言ったヤツ! 「そんなことないよー」と笑って返すが、彼は聞いた噂のほうを信じているようだ。 「どうだか」と言った宮田は少し笑っていて、をからかっているのがわかった。 「あら、生意気」 「いくつも変わらないじゃないですか」 宮田が返すと「それもそうね」とが頷くと宮田は肩を竦めて少しだけ呆れた表情を浮かべていた。 |
桜風
11.8.13
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