Blue1





あたしは小学生のとき、この町に引っ越してきた。

前の学校から転校するのがイヤで、駄々をこねてみたけど、やはりあたしは無力な小学生で両親に連れられてこの街にやってきた。

そう、そこに待ち受けている『運命の出会い』を果たすために...


...なんちゃって!!


『運命』どうこうはともかく。

あたしは出会った。

この近年まれに見る直向さと単純さ、オマケに無愛想さも兼ね備えたパーフェクト不器用人間、『宮田一郎』に。

因みに、これは褒め言葉です。


小学校4年生のとき、あたしは父の仕事の都合で引っ越すことになった。

父の仕事の都合というか、母の都合というか。

単身赴任、も考えたらしいけど母がそれを嫌い、結局家族揃っての引越しとなった。

「全く、迷惑この上ない」と言ったのは兄。

兄は丁度中学に上がるときだったからそんなに問題はないだろうと思ったけど、兄も兄で友達と離れ難かったんだと思う。


転校したクラスであたしの席は後ろの席だった。

そして、隣が

『何、あたし何かやった?何で睨まれてるの??』

って感じに目つきのステキなお子様、宮田一郎だったと言うわけで。

後で聞くと柄にもなく緊張していたらしい。一郎にとっては初の転校生だったそうだ。

でも、未だに何の何処に緊張するのかさっぱりわかんないけど...

それでも、意外なことに目つきの悪い宮田少年は転校して教科書が手に入るまで私に教科書を見せてくれていた。

ついでに、数日後初めて知ったのだが、お隣さんだったというコトにもこれまた驚き。

すぐに気が付かなかったのは引越しの挨拶を母が昼間に済ませ、放課後の宮田少年はまっすぐ家に帰らなかったから。

しかし、そんな宮田少年とあたしは親交を暖めていた。

それはもう、この時代を語るときには一郎は何故か遠い目をする。

ちょっと犬に追いかけられている状況に巻き込んでみたり、寄り道して学校に一緒に遅刻したり。

あたしは普通にやんちゃだっただけなのに...

しかし、まあ。そういう縁は続くもので。

それ以降、高校卒業するまであたしと一郎はクラスメイト記録を伸ばし続けた。



一郎はお子様の時からずーと同じ夢を抱き続けている。

お父さんのボクシングが世界に通用するってことを証明したいそうだ。

それは、とても大変で、とても遠い道のりだと思う。

でも、一郎はそれを諦めたことはないし、これからもないと思う。

それこそが、一郎である証だから。


って、言っても。

あたしはボクシングは全然わかんないんだけどね!


何はともあれ、あの宮田一郎が夢中になり、がむしゃらになるほどのものだ。ちょっとだけ興味を持って見に行ったことだってあるけど、どうもその良さが分からない。

おっさんたちが殴り合ってるだけのように思えていた。

なんったて、あたしが始めてボクシングを見に行ったときは小学生だ。

ボクサーって実年齢異常に老けて見えるのは何でかなぁ??

あれを見たとき、あたしは心から一郎にボクシングをやめるように説得したい気持ちに駆られた。

だって、一郎のいいところって顔くらいだもん。と、失礼なことを思っていた。

でも、それこそ一郎じゃない。

直向にボクシングの練習を積んでいるあの不器用者こそが宮田一郎だ。


「で?オレはなんでと一緒にこんなところを歩いているんだ?」

「そりゃ、あたしが一郎の練習に貢献するためだよ」

「ちなみに、俺の練習って具体的に何だよ?」

「筋トレ」

「素直に『荷物を持ってください』って言えよ」

「何のこと?」

「素直じゃないな」

「一郎。自分のことを棚にあげるんじゃありません!」

得意にそう言うと一郎は眉間に皺を寄せ、そして突然

「そういうの素直じゃないところ、可愛いな」

とか言いやがった!!

「うぎゃー!」という叫び声とともにあたしはその場で耳を押さえてうずくまる。

寒い...凍えそうです...

「ホント、のそういうところって可愛いよな」

寒気もおさまって耳を塞いでいた手を離した途端にまた一言。

こ、コレは効いたわ。

でも、ここで引けばあたしの完敗よ!耐えるの!!

「そういう一郎こそ、かっこいいよね。あたし、本当に一郎って凄いって思うし、尊敬してるわ」

目の前の一郎が固まるのが見て分かる。言った自分もかなりのダメージを受けてるくらいなんだ。一郎にとってもクリティカルヒットに違いない。

「俺が、悪かった」

「うん、わかってくれたらもういいよ」

その後、2人の間には微妙な空気が漂っていた。


「悪い、。俺もちょっと見たいところがあるんだけど」

「あー、あたしもまだ行きたいところがあるよ」

「じゃあ、待ち合わせるか?荷物持ちは欲しいんだろ?」

「いやいや。一郎の筋トレのだね」

「もうそれはいいから。ちゃんと持ってやるから」

「分かった。じゃあ、そうだね、1時間あれば済む?」

「余裕」

てなわけで、1時間後に待ち合わせることを決めて私たちはそれぞれの用事を済ませるべく解散した。




こういう軽口を叩き合える幼馴染って何だか良いですよね。
でも、一郎さんがヒロインに振り回されていた様子を想像すると...
何だかほくそ笑んでしまいます(笑)
私だけでしょうか??


桜風
06.8.27


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