Blue8





前に聞いたから、たぶん時間は間違っていないと思う。

夏の終わりの夕方にあたしは自転車を漕いで探し物を求めて土手へと向かった。


が、中々見つからない。

やっぱりこういうのって無理があったのかなー、って思いながらも諦めきれずに立ち漕ぎをしながら探した。

もしかして川向こうの方だったのかもしれない。

向こうを見ても米粒くらいの人しか見えず、しかも逆光。

かなり難易度が上がったわ。

「さっきから何やってるんだよ」

突然後ろから声をかけられた。

驚いて振り返ると不覚にもバランスを崩してしまい、

「ああー...」

あたしの自転車は無常にも土手を滑って落ちていった。

そして、間一髪であたしは一郎に支えられましたよ。

「危ないな」

これって突然後ろから声を掛けてきた一郎のせいじゃん!ってちょっとムッとしたけど、ここはお礼の1つくらい言っておいたほうが大人だろうと思った途端、

「お前、相変わらずとろいのな」

とか言いやがりましたよ!!

「失礼な!後ろから前触れもなく声を掛けてきた一郎が悪いんじゃない!!」

そう抗議すると「はいはい」と言いながら被っていたパーカーを頭から下ろした。

「で?こんなところで何やってんだよ」

改めて同じ質問をされる。

「捜し物」

「チャリに乗ってか?そんなに大きいものを探してるのか?」

「そ。これくらいの」

そう言いながら私は空中に一郎の輪郭を手でなぞった。

「俺くらい?」

眉間に皺を寄せて一郎が聞き返す。

「ジャスト一郎くらい」

「なら、俺だろ?何だよ」

あたしの言いたいことが分かったらしい一郎。

うん、流石だ。

しかし、あたしはその質問にはすんなり答えることはせず、土手を下っていった自転車を起こしに向かった。

それに続いて土手を降りた一郎が自転車を起こしてくれた。

ありがとう。

「で?俺に一体何の用だったんデスカ、サン?」

「気持ち悪いから、『さん』付けしないでくれます、一郎さん?」

「...確かに気持ち悪いな。で、何だよ。用がないなら俺は練習に戻るぞ」

そう言って一郎はあたしに背中を向けて土手を登ろうとした。

「一郎ってさ、『青』だね」

「は?」

一郎の背中を見て、昼間見た青空を思い出して思わず口に出していた。

「青?...それって挑戦者の色なんだけど」

微妙に嫌な顔をしている。

「いや、そういう意味じゃないんだけど。てか、挑戦者って青なの?」

一郎はこれ見よがしに深ーい溜息を吐いて、

「お前、何度俺の試合を見に来てるんだよ!いい加減気づけ!!」

と言って来た。

「面目ない...」

確かに、そんな感じだったような、そうじゃなかったような...

だって色なんて興味ないもん!!

「それはともかく。俺が青ってどういう意味だよ?」

「何となく。冷めてるというか...クールというか...?」

「まあ、よく言われるな、それ。でも、それって今更って感じしないか?」

「する。すっごい今更」

あたしの返答を聞いて一郎は苦笑をして肩を竦めた。

「じゃあな。気をつけて帰れよ、

そう言ってパーカーを被り、今度こそ一郎は土手を駆け上がった。

「一郎!!」

すっかり忘れていた。

あたしはこのために一郎を探してたんじゃん!!

またしても一郎は足を止めて振り返る。

「これ、あげるよ。誕生日おめでとう!!」

そう言って鞄の中に入れておいたものを一郎目がけて投げた。

ちょっと逸れたけど一郎はそれを難なくキャッチしてちょっとビンテージの箱を見た後、またしてもパーカーを下ろして

「サンキュー、!」

とその箱を持っている方の手を軽く上げた。


あ、そうか。違う。

一郎は水の青じゃない。

空の青だ。

真っ青な青空。

そんなに爽やかじゃないけど。

あったかいところも、寒いところも優しいところも厳しいところも全部持ってて、でも、見てたら落ち着いて...



「じゃあな、!」

一郎は練習に戻っていった。



ついでに。

ああやって絶対に態々パーカーを下ろして話をするのはあたしにだけ。

一郎は、どんなに曇っててもあたしには飛び切りの青空を見せてくれる。




ああ、ハンパ...
でも、これ以上伸ばしたら『中編』ではなく『長編』になりそうだったから...
それはそうと、ヒロインは一郎さんのためにスポーツ用品店へ行って
「ビンテージください」
って言ったに違いない!
店員さんに用途を伝えて理解したかと思われます(笑)

兎にも角にも。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました!!


桜風
06.11.4


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