縁は異なもの 4





「ちわー」と配達先の玄関を開けて声をかける。

ぱたぱたと足音が聞こえて着物姿の同年代の女性が出てきた。

「いらっしゃい」と彼女は言って、ぱた、と口を押さえる。イントネーションを間違った。

「あれ?さんって関西出身だったの?」

それにしては標準語が上手だ。

関西出身の人は結構そのアクセントが残っていると思う。今のみたいに。

「いえ、違います」

苦笑しては木村が配達してきた花の確認をしている。

「じゃあ、関西弁愛好家?」

「んー、それもちょっと...はい、ありがとうございます」

確認が終わってが全ての商品が揃っていたことを告げた。

「少し、5年程度ですけど大阪に居たんですよ。父の転勤にうっかり着いて行ったらこっちに戻ってくることになって」

5年は長いのか、短いのか...

しかし、大阪居たことがあるからか、と納得した。

「じゃあ、向こうにいたときはバリバリの関西弁?」

「いいえ。関西弁が苦手だったんですよ。ほら、地元の人は無理やりな関西弁を聞いたらやっぱり良い気がしないんじゃないかって思って。ずっと標準語で通してたら友達が出来なかったんですよねー」

「でも、今さらりと出たじゃん。エセ関西弁って感じじゃなかったよ」

苦笑しながら木村が言う。

正直、聞きなれていないから面食らったほどだ。

「優秀なセンセイがついてくれましたから」

クスクスと笑いながらが言う。

「へえ?じゃあ、その優秀な先生のお陰で今の?」

「たぶん」と笑う。

先日久しぶりにその『優秀なセンセイ』に会って以来、思わずポロリと関西弁のイントネーションになるときがある。

まあ、別に関西に住んでいなくてもテレビでよく見るから友達の中でも突然イントネーションが関西弁のそれに変わる子はいるからそんなに違和感は無いと思うが...


「そういえば、ウチも時々関西弁のが来るんだよね」

不意に木村が言う。

「来る、ってお店にですか?」

「いや、ジムの方」

木村がボクシングをしていることは知っている。プロだそうだ。

普段こうして会話をしている木村に『ボクシング』というのは中々すんなり結びつかないが、中々どうして。ちょっと前までやんちゃをしていたそうだ。

ここの先輩が偶然にも木村の知り合いだったらしく、初めて木村が此処に配達に来たときはお互いが指差して叫んでいた。

お互い丸くなったなぁ、と。

自分とひとつしか違わない人たちがどうにも年寄りくさい話をしていたのでは思わず笑ってしまい、それがきっかけでは木村に認識された。

元々ここの新参者なので彼女が色々と簡単な面倒な手続きとかをすることになっている。

今回みたいに荷物を受け取ることもそのひとつだ。

「関西出身の方が入門されたんですか?」

「いや。元々大阪のジムに所属しているプロだよ。偶にこっちに遊びに来るんだ」

遊びに、とは...

「木村さんのライバルですか?」

「いーや、一歩の。って一歩、知らないよな?」

「すみません」とが謝ると「いや、それが普通だよ。馴染みがないんだし」と木村がフォローを入れる。

さん」と廊下の向こうから声をかけられた。窘めるようなその声に思わず首を竦めた。

「あ、じゃあ。これ伝票ね」と木村が慌てて配達伝票を渡し、「すみません」とは小さく謝る。

長く話をしすぎた...

最近怒られることが多いな、と思いながらは今しがた木村が配達してきた花を部屋に運んだ。









桜風
10.5.22


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