縁は異なもの 6





夕食を食べて風呂も済ませてやっとゆっくりできる。

はリビングから持ってきて机の上においていた手紙を手に取った。

凄いな、宛名に平仮名がある...

そんなことを思いながらペーパーナイフで丁寧に封を開けた。

開いた便箋は縦書き用の罫線が入っているのに何故か横書きだ。

それはそれで凄いな、と苦笑して読む。

そして「あ、」と呟いた。

そうか...

手紙の差出人こと、千堂は手紙の中で少々恨み言を書いていた。

どうやら書いたつもりでいた電話番号を書き忘れていたらしい。

そうか、そうか。

まあ、自分は文通でも良いのだが、この文字の解読には少々骨が折れそうだ。

そう思って机の引き出しを開けて便箋を取り出した。

元々が持っていた便箋はどうにも可愛らしいものばかりだった。だが、千堂にそんな可愛らしい便箋で手紙を出したらちょっとした嫌がらせと捕らえられると少々辛い。

そう思って落ち着いた柄の便箋を態々購入した。

今回も同じ便箋にするかな、と思ったがそれは少し面白くないのでやはり後日別の柄の便箋を購入してから返事をしよう。

引き出しの中にそれを仕舞ってとりあえずその日は眠ることにした。


翌日、学校帰りに寄り道をした。

さて、どれが良いのだろうか...

大きな量販店の文具コーナーに足を向けて便箋が並べてあるその前で唸り始める。

渋いのにしようか...いやいや、ここはワンポイントに可愛らしいもの。それよりも季節感のある...

延々と悩んで、やはりシンプルなもので落ち着いた。

そして、帰宅しようと思ってふと思い出した。

先日、木村が言っていたのだ。

何でも自分のジムが雑誌の特集を組まれた、と。

それは凄いことなのか分からないが、それでも配達に来てくれるお兄さんがそう言ったからには見なくてはならないだろう。

「見た?」って話になったときに「あんまり興味なんで」とかさすがにいえない。

しかし、立ち読みする勇気もない。

...ここは、父に頼むか?

そう思ったが、一応書店に行くとそういった雑誌のところに女性も居たので最近は女性も興味を持つのかな、と安心して雑誌を購入して帰った。

まあ、じっくり読んでみても良いかと思うし。


帰宅するとちょうど夕飯の支度中の母に手伝うように言われてバッグを部屋においてキッチンに向かった。

「遅かったのね」と声をかけられて「ちょっと買い物して帰ったから」と返す。

「ああ、お手紙の返事?」

「...見ないでよ」

やはりあのシステムはどうかと思う。

どうかと思うが..仕方ないのだろうな。自分が一番に帰宅しなければ結局誰かが届いた郵便物を家に持ち込むようになるのだから。その際、見なかったら良いのだが、やっぱり目に入ると興味を引くのだろう。

「大阪の子だったわね」

「だから、そこまで見ないで」

「懐かしいわねぇ」

聞け、わたしの話!

そう思ったが母は脳内で数年前の大阪生活にトリップしているようだ。

あの当時は母もそれなりに言葉の壁と言うか、文化の違いと言うかで苦労したはずなのに、今は良い思い出なのだろう。

「そういえば、この間大阪行ったじゃない?」

「行ったよ」

「誰かに会ったの?」

「会ったよ」

「誰と?」

「千堂君、って覚えてる?」

「ああ、あのやんちゃな札付きの...あら、運命の再会じゃない」

あー、はいはい。

何故か浮かれ始めた母親を横目には食事の支度を続けた。

何故母がこんなに浮かれるのかさっぱり分からない。

『運命』という言葉がそんなに嬉しいのだろうか...

玄関で「ただいまー」という声がした。

「ほら、早く作らないと」と母を急かすと彼女は肩を竦めて再び手を動かす。

やっとこの話題は切り上げることが出来そうだ、とはこっそり息を吐いた。









桜風
10.6.5


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