縁は異なもの 7





に手紙を出してからと言うもの、千堂は毎日郵便受けを覗いている。

それこそ、数時間おきに。

「少しは落ち着いたらどうや?」

呆れたように祖母が言うが、「わかっとるわ。ワイはしっかり落ち着いてる」とムキになって返しながら店先に出て郵便が来るのを待つ始末。

祖母は呆れてものが言えない、という表情を浮かべていた。


「おっそいなぁ...」

手紙を投函した日も含めて5日目。

遅すぎる。

やはり電話番号を教えたくなかったのか。いや、そもそもあの住所はうその住所だったのだろうか。

昔の同級生に連絡を取っての住所を聞こうかとも思ったが、残念なことに、彼女は友達が少なかった。

友人といえば自分の周りに人物だけだからおそらく状況としては自分のほうが少しだけ上を行っているはずだ。

「何や千堂。また練習に身が入ってへんで」

「ちょお走ってくるわ」

サンドバッグを打っていたが、どうにも集中できない。

仕方ないので、走ることにした。

やはり、手紙と言うのは自分の性に合わないとつくづく痛感した。


練習を終えて家に帰る。

郵便受けを覗いてみても何もない。

「来てなかったで」

その様子を見られた気まずさから「さよけ」と適当に答えて千堂は自室に足早に入っていった。


暫くして電話が鳴る。

出たほうが良いのか、と思って部屋から出た。

「武士。べっぴんさんからや」

何で電話なのに相手の顔が分かるのだろうか...

祖母から受話器を受け取って「もしもし」と言ってみたら『千堂君?』という声が返ってきて思わず受話器を放り投げた。

ガチャンと大きな音がして祖母が様子を見に来る。

「何してんのや」

眉間に皺を寄せる祖母に気まずさを覚えながら「もしもし」と先ほどと同じ言葉を繰り返した。

『何か、凄い音がしたんだけど...』

電話の相手は今手紙の返事を待っている相手だった。

電話をするならすると、さきに連絡をくれても良いのに...

そう思いながら「すまん」と謝る。

『ううん、何か忙しいときに電話しちゃったかな、って。今大丈夫?」

「ああ、かめへん」と千堂は返した。

正直、もういっぱいいっぱいだった。

ああ、電話でよかったとすら思っている。

『手紙ありがとうね。ごめんね、電話番号書いたつもりだったんだけど』

何だ、イヤで書かなかったわけじゃないのか。

そう思うと少し落ち着いてきた。

「案外そそっかしいな」

『忙しかったの。けど、今を逃したらまた手紙とか出しにくくなるだろうし。だから急いで出したら、忘れちゃった』

何だ、そういうことか。それなら仕方ないなぁ。

機嫌が随分と良くなった千堂は「まあ、しゃあないわ」と余裕たっぷりに返していた。

「それで、何の用や?」

『いや、特に。今度の手紙も今日投函したからもしかしたら明後日になるだろうし。千堂君、待つの苦手だったと思うから一応今日投函しました、って話しておかなきゃならないかなって思って』

というの言葉に図星を指された気まずさを感じた。

「別に、待ってへんわ」

意地を張っていってすぐに後悔した。

『あらあら、残念』とは軽く返している。

「用はそれだけか?」

『うん。まあ、手紙送ったからそれに書いてるし』

「何や、用があったんか?」

『うん。でも、手紙送ったし。千堂君は待ってなかったらしいので今すぐにいう必要ないと思うしね。送った手紙に書いているから』

あ。遊ばれている...

此処でムキになって教えてほしいといえば降参したことになるし、かといって待つのは苦手だ...

だが、今日投函したと言っていたから、明後日くらいには遅くとも届くだろう。

「まあええわ」

千堂がそう零すと「ふふふ」と耳元で笑い声がある。

くすぐったい。

『あーあ、残念』

そういったは『じゃあね』と言って電話を切った。

「いうたやろ。べっぴんさんや、って」

祖母が勝ち誇ったような笑みを浮かべてそういう。

それを肯定するのは悔しくて、「まあまあや」と答えると祖母がおかしげに笑った。









桜風
10.6.12


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