Green3





鞄から私のお守りを取り出した。

3回深呼吸をして、木村園芸へ向かう。

すると、エプロンをつけたあの木村達也さん(仮名)はまだ店先に居た。

「あの、すみません」

「いらっしゃいませ。...あれ?さっきダッシュで帰っていかれませんでした?何か急用が出来たのかと思ったんですけど」

その記憶、今すぐ削除してください...

「えっと、先ほどはすみませんでした。ちょっと心の準備が出来てなかったので」

木村達也さん(仮名)は「心の準備ですか?」と笑いながら対応してくれる。

「それで、えっと。花束ください。友達が入院したんです。お見舞いに持って行こうと思うのですが...」

彼は愛想よく話をしながら器用に花束を作る。

あっという間に立派な花束が出来た。

やっぱり別人かなと思ったけど、どうしてもそうは思えない。

印象は違うけど、でも、不思議と何だか別人のような気しない。

花屋で働く手先が器用なボクサーがいたって良いじゃないか!!

と思ったものの、やっぱり何も言えなくて、代金を払ってお店を後にした。


意気地なしな自分が少々情けない。

あー!もうッ!!何なんだ、私!!

またもや回れ右をした瞬間足が止まった。

丁度木村達也さん(仮名)はお店の外に立って、そして、拳を突き出して何かやっていた。

その姿が私の心に焼きついていた木村達也さんと同じだった。赤に近いオレンジ。

だから、間違いない。

「あの!」

さっきまで鋭い目をしていた彼がふっと柔らかい目をしてこっちを見た。途端に緑になる。

「ああ、さっきの。どうかしたんですか?」

「ありがとうございました。コレ、あげます」

私のお守り代わりの栞を半ば押し付けるように渡して私は今度こそすっきりして去っていこうとした。

けど、出来なかった。

彼が私の腕を掴んでいた。

「ああ、すみません。ありがとうございます。えーと...」

彼が何を言いたいのか分からずに次の言葉を待っていた。

「えーっと。俺は木村達也って言います。あの...」

ああ、名前か。

「私はです。木村さんにずっとお礼を言いたかったんです。木村さんの試合を見て感動しました。すっきりしました」

「すっきり...?ああ、そうだったんですか。ありがとうございます。これ、本当に貰ってもいいんですか? さんの大切なモノじゃないんですか、四葉のクローバー」

「はい。でも、私は木村さんに感動を貰いましたから。だから、その、そんなもので申し訳ないのですが...」

「ありがとう。実は今日、俺の誕生日だったんですよ。思いがけない誕生日プレゼントを貰っちゃいましたね」

そう言った彼はとても優しくて、安心できる笑顔だった。

「あの、また来ても良いですか?」

思わずそう言ってしまうほどに。

「いいですよ。いつても来てください、 さん」

彼の誕生日だというのに、私こそ、また彼から思いがけない優しさをもらってしまった。

何で、この人は自然に人を癒せるんだろう...?

ああ、でも。私の彼に抱いた直感、緑。間違ってなかったことに、何だかほっとした。

足取り軽く向かった病室で友人を笑い、家に帰った。

殺風景な家の中を見渡して小さく決心する。

近々、また木村園芸店へ行こう。

『明日』でない辺り、私が小心者であることが強調されてるよなー...




前回に引き続き少々(仮名)が目に付きますね。
でも、大丈夫!今回で(仮名)はお終いですので!!
何、胸張って言ってるんだか...


桜風
06.11.11


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