Green4





家の中を華やかにするべく、再び木村園芸へ向かった。

「こんにちは!」

前の時と同じようにお店の中に声を掛けると今度は後ろから声が返ってくる。

「いらっしゃい、 さん」

振り返って、その先にあった顔に思わず「うわぁ...」と声が漏れた。私の表情を見た木村さんは苦笑をした。

「ちょっとね、今日練習で。待っててください、荷物置いてきますから」

「はい」

何だか、ビックリしてしまった。

そうだよね、ボクサーだもんね...

花屋の彼とは全然印象が違ってビックリした。

「はい、お待たせしました。今日はどれにします?」

「殺風景な家の中を華やかにするべく来たのですが...何がいいですかね?」

「殺風景なんですか?」

笑いながらそう聞かれて何だか恥かしくなってきた。

「えと、まあ...はい」

「じゃあ、好きな色は?」

人の印象を色にしてしまう私は自分の好きな色と言うのが思い浮かばない。

「えーと、んーと」

応えあぐねて、思いついた言葉が

「あの、私って何色って感じですか?」

だった。

しまった。質問を質問で返してしまった...

さんですか?んー...今日会って2回目だからなぁ。あ、でも、赤かな?赤、というか、パステルカラーで、ピンクって感じになるかな?」

何でだろう?って思って彼の言葉に耳を傾けていると

「ホラ、初めて会ったとき。この店で。1回ダッシュでいなくなったのに戻ってきたじゃないですか。そのとき、顔が赤くなってたから」

だから、その記憶は削除してくださいってば...

「よし、じゃあ、可愛い感じで行きましょうか」

そう言って、鼻歌を歌いながら可愛いピンク系の花を手に取っていく。

鼻歌を歌って花を選ぶ男の人って想像すると寒いけど、何で木村さんには違和感がないのかしら?

「よっし!こんな感じになるけど、どうですか?」

「わ!可愛い!!凄いです!これ、コレでお願いします!!」

「任せといてくださいよ」

言いながらあの時みたいにするすると花束が出来上がった。

「さすがですねー」

「まあ、小さいときから見てましたからね」

「お花屋さんが好きだったんですか?」

私の問いに、木村さんはきょとんとして、その後笑い始めた。

「や、ここ俺の実家ですよ。店の名前と俺の名前一緒じゃないですか」

「え?あ、いや。ねぇ?ホント、一緒ですよねぇ」

「ははは」と私は愛想笑いで返す。

一緒だけど、ここが実家だ何て思ってなかった。結びつかなかった。

ホント、木村さんって不思議な人だ。

代金を支払って帰りながらそう思っていると、「 さん!」って声がして振り返る。木村さんが歩いてきながら手招きするから、戻ってみると

「ほら、あげるよ」

と髪に何か挿した。

見たいけど、見えなくて触ったら壊れるものかもしれないし。

すると、肩を持たれて、右を向かされた。

喫茶店の窓に私の姿が映る。

街頭の光ではイマイチ色は分からないけど、でも、そこには花を挿した私の姿が。

「え?あの...」

「まあ。売れ残りで悪いんだけどさ。可愛いからあげるよ。四葉のクローバーのお礼」

「あ、あの。ありがとうございます!」

勢いよく頭を下げようとして途中で止まって続きはゆっくりになる。

花が落ちてはいけない。

そんな私の姿を見て木村さんが笑い出した。

「いや、そんな。大丈夫ですよ」

「や。でも、落ちたらいけないので」

「けど、そんなに大切にしてもらえるならあげた甲斐がありましたね」

そう言って木村さんは「じゃあ、また」と手を上げて帰っていった。

家に帰って私は今日の花束を花瓶に挿す。

そして、髪に挿してもらったその花を大切に手にとって、あのときの四葉のクローバーのように押し花にした。

今度はこの花が私のお守りだ。




キム兄さんはきっとスパーでボコられたのです。
青木さんにではなく、鷹村さんに!(笑)
笑い事じゃない...


桜風
06.11.25


ブラウザバックでお戻りください