| Green5 |
| あれから、週1回のペースで木村園芸店へ通った。 木村さんが店番しているときもあれば、お父さんやお母さんがお店に出ていることもある。 今日は木村さん。 「あれ?じゃあ、 さんは俺よりふたつ年下なんだ。大学生かー。え、就職じゃないの、今年」 何となく、最近はお店で世間話をするようになってきた。 「そうですよ。もうね、不景気帰れ!って感じです...」 「だから、今日はスーツなんだね」 「大変だねー」と言いながら木村さんは空を見上げる。 「あー。雨が降るかも」 「え?ホントに?あ、じゃあ帰ります。ありがとうございました」 「ちょい待ち。配達があるからついでに送ってくよ」 そう言って木村さんはお店の奥へ向かう。 送ってく?え、何コレ。何、この展開!? 木村園芸店と書いてある車がお店の前に回ってきた。 「ごめんね、こんな車で。俺の車もあるんだけど、配達するからには店の車で行ったほうが良いだろうから」 「いえ、もう。そんな全然。カッコイイです!」 「ホントに?」 配達用の花を積む手を止めないで木村さんは笑いながら聞き返す。 「いや、ほんのちょっと、あのー」 確認されると正直に言わなくてはならないような気がしてもごもご言っていると、また木村さんが笑う。 「ホントのコトだし、気にしなくていいから。俺もダサいって思ってるんだし」 「いや、もう。ホントに、ねぇ?」 私は木村さんに笑われてばかりいるなー... 「あー。ちょっと時間ないから配達先に済ませてもいいかな?」 「はい!大丈夫ですよ」 丁度バイトないし、乗せてもらっているんだから。それに、お花屋さんの木村さん、何だか好きだし。 配達が終わった頃、雨が降り始めた。 「あー、やっぱ、来たな」 「ですね。木村さんの天気予報当たりましたね」 「だろ?」そう言って笑う木村さんが何だか可愛くて私は思わず笑った。 「何だよー。そういえば、聞いてみてもいいかな?」 「何でしょう?」 「俺の、試合を見たって言ってたよね?いつの?」 「冬にあった。あのー、ベルトの」 「ああ、アレか...」 木村さんが苦い顔をする。 「ボクサーやっててさ、あのベルトは凄く憧れで。でも、それが手に入るかもしれないってところまで行くのも大変なことで。引退を覚悟して臨んだんだけどな、結局負けて。引退しようと思ったけど、やっぱりボクシングが辞めれなかった。そっか、あの時の...」 「でも!でも、あの。私はボクシングのこと全然知らなくて見て、今でも何だか良く分かんないですけど、でもいつの間にか木村さんを応援してて。あの試合を見て涙を流すくらい感動をして。私は木村さんのお陰で元気になりました」 私の勢いに押された感じの木村さんは一瞬言葉に詰まって苦笑する。 「そう、だったね。初めて会ったとき『すっきりした』って言われたよね、俺」 「私、そのひと月くらい前に振られたんです。浮気されてて、というか、私に浮気してて本命は他に居たって人だったんですけど。そのときは、私凄く好きで、そんな彼にそのー、捨てられた、という形になって。毎日がどーでも良くなってたんです。でも、偶然友達がその試合のチケットをくれて。初めて見たボクシングが木村さんのあの試合だったんです。私、逃げてたんだと思うんですよね。彼に振られたっていう現実から。でも、あの木村さんの姿を見て、『生きる』ってことはきっと『闘う』ってことだって教えられた気がしました。だから、木村さんは私の恩人です」 一生懸命自分を語ってしまったその事実に気恥ずかしさを覚えながら目を逸らす。 車の窓ガラス越しに木村さんを見ると優しく微笑んでいる彼と目が合った。 「ありがとう。俺、まだまだ頑張るから。また、応援してくれるかな?」 「もちろんです!」 振り返ってそう言うと、彼は優しく微笑む。 きゅう、と胸が締め付けられると共に、私の心の中にまた緑色が広がる。 いつか、この心に広がる緑に花が咲くのだろうか。 咲いたらいいな。 いや。もう、きっと咲いてる。 「ねえ、木村さん。春になったらお花見しません?」 「お、いいねぇ。桜かー」 満開の桜の季節に私の心に咲いた花を伝えてみよう。 「貴方が、好きです」 |
| よーく考えたら。 この連載ではヒロインの名前は自ら語ったとき以外出ていない。 つまり、キム兄さんに一度も名前で呼ばれていないことになります... ドンマイ☆ 皆様のお陰でキム兄さんの誕生日連載終了です。 ありがとうございました!! 桜風 06.12.2 |
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