彼女と彼の間には―side彼女― 3





体育祭もなんとか終了した。

実行委員は一応片付けなるものがある。

「やっと終わったな。」

片付けていると宮田が声を掛けてきた。

「だね。でも最後の会合が終わるまでは委員長のままなんだよね〜。」

「あと一週間じゃねぇか。もう準備する事だってないし、少しは楽になるんじゃね?」

「やることが無いなら無いで少し寂しい気もするけどね。」

忙しかったけど、楽しかったのも嘘じゃない。


そうして、最後の会合が終了したと同時にあたしと宮田の、委員長、副委員長の任も解かれた。


でも、実行委員じゃなくなってからも宮田とは結構話をするようになっていた。

宮田って意外と馬鹿なところがあるし、なんていうか、ちょっと無愛想なところがあるけど全然普通だった。無愛想って慣れたら何でもないことだしね。



でも、やっぱり宮田は人気があって色々文句言ってくる人たちが居た。

そんなに話したかったら自分から話し掛ければいいのに。宮田は話しかけたら、とりあえず何か反応を返してくる。



その日の昼休憩も人気のない階段に呼び出されて何とも頭の悪そうなことを言われた。

いつものことだし気にしないで休憩時間に宮田に話しかける。

「あ、宮田。この間言ってた映画がさぁ...。宮田?おおーい、どこ行くのさ?」

でも、何だかよく分からないけど無視された?

用事があったのかもしれないから、別のときに話をしようと思ったけど、とことん無視される。しかも露骨に。

...あたし何かやったっけ?

理由が分からないままって言うのは嫌だ。あたしが悪いなら悪いでそれが知りたい。



以前、誰かが宮田が走ってるところを見たっていう土手で待ち伏せてみる。

家の前は家族の人にも迷惑が掛かるから、まずはここを張る。それでダメなら...どうしよう?


宮田を待っていたら本当に走ってきた。誰かと一緒に走っているって事は宮田の習い事ってスポーツだったんだ。

「宮田。」

目の前を通ったときに声を掛けたけどやっぱり無視された。

...いい加減ムカツク。

アンタがその気なら、

「こら、待て!耳が遠いのか、宮田!宮田一郎!!一郎君!一郎ちゃん!!いっちゃん!」

大声で叫んでやる。しかも変な渾名で。

さすがにこれは無視できなかったらしく、宮田が戻ってきた。作戦成功!!

「何なんだよ、お前は。」

走ってきた宮田が溜息混じりで言う。

「それはこっちのセリフ。宮田、アンタ何であたしを露骨に無視してたのさ。」

「...俺と仲良くしてると色々煩いんだろ?」

「へ?...もしかして、どれか聞いてたの?」

「どれかって何だよ。この前屋上から降りるときに偶然聞こえてきたんだけど、それ以外にあるのか?」

「それなりに。なるほど、それであたしを無視するっていう発想に至ったワケか。」

ふむふむ、納得。

「まぁ、そういうことだ。じゃあな。俺のせいで迷惑掛けて悪かったな。」

そう言ってジョギングに戻って行きそうだったからシャツの裾を掴んで止めた。

「ちょっと待ちな。」

「何だよ。」

「何か勘違いしてるようだから言っておくけど、あたしは宮田を迷惑だなんて思ってないよ。宮田と仲良くしてるとああなることくらい分かってたもん。『迷惑か迷惑じゃないか』を決めるのは宮田じゃない、あたしだ。
アンタと話をするのは楽しかったし、誰かに言われたから『はい、そうですか。』って引き下がるつもりもない。あたしって結構負けず嫌いなんだよね。ここで宮田と話をするのをやめたらあの人たちに負けたことになると思わない?それは、絶対に嫌だ。
というわけで、そんなにあたしに悪いと思っているなら、こっちの方に協力してほしいな。」

そういうと宮田は少し驚いたようで、目を丸くして

「...お前って変な奴だよなぁ。」

と言ってきた。何となく、いつもの宮田だと思った。

「しみじみと言うな!...ねぇ、宮田。」

ずっと言えなかったことを言おう。

「何だ?」

「あたしずっと謝ろうと思ってたことがあるんだ。4月の始業式の日、あたし思いっきり宮田のこと鼻で笑ったでしょ?」

「ああ、あったな。アレにはかなりムカついた。」

ああ、やっぱりね。普通は自分が鼻で笑われて腹が立たないことはないと思う。

「あたし、宮田ってもっとキザったらしい奴だと思ってたんだ。『女に騒がれて当然』って思っているんだって、そう思ってたの。あたしそういう奴ってどうも好きになれないから。でも違ってた。ちょっと馬鹿なところもあって全然普通の同級生だった。本当、勝手な思い込みで失礼なことをしたよね、ごめん。」

「馬鹿なところって何だよ。...まぁ、今は気にしてねぇよ。俺もお前のこと色々勘違いしてたところあるしな。済んだことだし、誤解も解けたって事だろ?もう気にすんなよ。」

宮田、ここでそうやって優しく笑うのは反則。あたしが恥ずかしくなるじゃない。

「...ありがとう。実はずぅっと気になってたんだよ。良かった、やっと言えた。そういえば、宮田の習い事ってスポーツだったんだ。」

少し照れ隠しに話を逸らす。

「知らないでここを張ってたのか?」

驚いているようだ。確かに、普通は驚くよね。

「前に、誰かが言ってたのよ。この土手を走っている宮田らしき人を見たって。だから、とりあえずこっちに来てみたんだ。じゃあ、呼び止めてごめんね。話が出来て良かった。ありがとう。」

「ああ。俺はもう戻るけど、も気をつけて帰れよ。」

そう言って宮田は夕焼けの中走って行った。

宮田って夕焼けが似合う。


...ん?あたし今何考えた?



翌日、いつものように宮田に話しかけた。宮田も今までどおりに言葉を返してくる。

いつもの素っ気ない宮田の返事が嬉しかった。




やっとこさ、ちょっとだけ素直になれたヒロイン。
でも、やっぱり一郎さんと友達してると色々大変そうですよね...


桜風
05.5.3


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