彼女と彼の間には―side彼女― 5





宮田は自分の試合が決まったら必ず教えてくれていた。だから、あたしも必ず応援に行っていた。


3年のクラス替えで宮田とは別のクラスになった。

去年の今日は早く1年経てばいいのにって思ってたけど、今は、あの無愛想な顔が教室にないと物足りない。

人付き合いが苦手みたいだけど、話し掛ければそれなりの反応は返ってきていた。少し素っ気ないけど、慣れれば気にならない。たまに見せてくる笑顔は心臓に悪いけど...。

宮田とは結構気が合ったし、いい友達だと思う。

―――イイトモダチ、ね...。



「よ、お疲れ。」

『東日本新人王トーナメント』とかいうのに宮田は出ているらしい。

試合が終わったらいつも、あたしは宮田が出てくるのを外で待っている。そして、宮田が送ってくれる。これは既に恒例になっていた。


「宮田って本当に強いんだね。」

「まだまだだけどな。」

「しかも、ファンからの黄色い声援もまた凄い...」

うん、凄かった...。

「まあ、そうかもな。」

そんな話をしながら帰る。


いつもどおり帰っていたけど、家の近くまで帰ったとき、あたしは足を止めた。

「どうした?」

あたしにはもう、この溢れてくる感情は押さえられない。

「―――宮田。あたし、アンタのことが好きだわ。...じゃ。」

言うだけ言ってあたしは足早に家に向かう。

でも、

「ちょっと待てよ。」

宮田に腕を掴まれてしまった。

「な、何?」

顔を上げる事ができない。

「言い逃げは良くねぇんじゃねぇの?」

言葉を切って、

「...俺も、のこと、好きだぜ。ったく、俺より先に言うなよ。何かカッコ悪いじゃねぇか。」

そんなことを言われた。驚いて顔を上げようとしたら、抱きしめられた。

宮田の心臓の音がする。少し、速い。

「宮田。」

「何だよ。」

ぶっきらぼうに、でも優しい声。

「心臓、ドキドキいってるよ?」

「だろうな。...お前のも同じだろ?」

「うん、そうだね。ドキドキいってる。」

宮田の心臓の音が心地よかった。


少しして、宮田の腕が緩んだ。

「じゃ、じゃあ。また学校で。」

「ああ、また...」

少しギクシャクした会話のあと家に帰る。

今日は何も考えられそうにないからすぐに寝よう。



付き合い始めてもあたしたちはあまり変わらない。宮田は試合があるし、あたしはこう見えても受験生だ。

でも、一緒に帰るようにはなった。

「そういえば、。」

「...。」

』って呼んだ?は、恥ずかしい...。

「な、何よ、突然名前で呼んだりして。」

「いや、折角だし名前で呼んでもいいかなと思って。嫌だったか?」

「い、嫌じゃないけど突然すぎるのよ。ちょっと待って、落ち着くから。」

深呼吸をしよう、それなら落ち着くかも。でも、あたしが必死に落ち着こうとしているのに

「早くしてくれよ。」

と楽しそうにからかってきた。中々落ち着けなかったけど、何とか落ち着いて

「で、何?」

と用件を聞いみる。『ただ呼んでみただけ』って言ったらぶん殴る。

「今度の試合も来れるのか?そろそろ受験が大変な時期になるだろ?」

何だ、そんなことか。

「何言ってるかな?行くに決まってるじゃん。次に勝ったら決勝だね。」

「ああ、あと1つだ。」

「決勝戦に何かあるの?あと2つ勝たないと優勝しないよ?」

「決勝戦で会おうって約束してる奴がいるんだ。」

「宮田って意外と律儀だよね。」

宮田って実はかなりの律義者だったりする。

「『宮田』、ね。」

溜息混じりで言われた。

「何よ。」

「...いや。あまり欲張りすぎるのも良くないだろうから、今はいいさ。」

うん。...悪いけど、もう少し待ってよ?




何だか妙に余裕をお持ちの一郎さん。
ヒロインはいっぱいいっぱいなのにねぇ。
さぞかしヒロインは悔しいと思っていることでしょう(笑)


桜風
05.6.1


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