彼女と彼の間には―side彼女― 7





3学期に入ってから学校は開店休業状態。学校に行かなくて良くなったのは嬉しいけど、でも、宮田に会うことも出来なくなった。

電話番号は知っているし、住所も一応分かるけど、会いに行ったって『勉強しろ』って言われるのがオチだと思う。

仕方がないから勉強に専念する。

大学生になったら時間も結構融通が利くみたいだし、たくさん宮田と過ごせる...はず。



2月。

やっと試験が終わった。後は結果を待つだけだから、存分に遊びたい。

家に帰ってすぐ電話した。

『はい、宮田です。』

お父さんが出てきた。

「こんにちは。ですけど、宮田君はご在宅ですか?」

『ええ、居ますよ。ちょっと待ってください。一郎!』

ドキドキしながら宮田の声を待つ。

『もしもし?』

「宮田、遊べ!!」

久し振りの宮田の声に嬉しくて自分の声量絞るのを忘れた。

『遊べって...お前受験は?』

少し呆れたように宮田が言う。

「今日終わった。だから遊べ!!」

『...分かった。』

溜息混じりに了承した宮田に時間と場所を告げて電話を切った。

明日、やっと宮田に会える!!



待ち合わせ場所に着いたけど当然宮田の姿はなかった。まあ、30分前だしね。

ふと思う。あたしたちはこうやって待ち合わせてどこかに行ったことはない。あたしが待ち伏せたことはあるけど。ということは、今日は初デートってやつになるのか?

そんな事を考えていたら宮田の姿が見えてきた。

「悪い、待ったか?」

「うん、とっても!」

何故か宮田が苦笑をした。...呆れたのかな?

「冗談だって。そんなに待ってないし、時間前じゃん。そうそう、あたしさっき気付いたんだけど、今日が初デートってやつだよ。」

「...そう言えばそうだな。」

少し考えて宮田が答えた。

そして突然、あたしの手を取る。

「な、何?」

驚いて聞いてみると、

「この方がそれっぽいだろ?」

と悪戯っぽく笑う。

宮田はそのままあたしの手を引いて足を進める。


あたしのリクエストを全部聞いて宮田は付き合ってくれた。

買い物をするけど、少し疲れた。

「あー、体力落ちたわ。殆ど引きこもり生活だったからなぁ。」

「じゃあ、どっか入って休憩するか?」

宮田の提案で喫茶店に入ることにした。


しかし、ここに入ってから宮田の様子が何だかおかしい。妙に落ち着きがないと思う。いつもは年の割りに落ち着いているというのに。

。」

「何?」

「俺、高校卒業したらボクシングで海外、タイとか韓国とか回るんだ。」

「...そうなんだ?」

「それで...」

宮田が言い淀む。

早く言え!あたしはちゃんと頷くから。

っつうか、何でこういうことをはっきり言い切れないんだろ、この男は。

「ああ、もう!またあたしから言うぞ?!」

少し呆気に取られているみたい。

もお、いい。あたしから言うんだから!

「仕方ないな、待っててあげるよ。」

「いいのか?」

宮田が驚いたように、でも、嬉しそうに聞き返してきた。

「当然!浮気すんなよ、一郎。」

きっと予測出来てない言葉を言ってやった。さっきあたしを焦らしたバツだ。

でも、

「当たり前だろ?お前以上のいい女なんてそうそう居るはずないからな。」

なんて言われて、あたしが大きなダメージを受けてテーブルに突っ伏した。

忘れてた。一郎って『カウンターの貴公子』だったんだ。見事なカウンターだった。

「一郎の馬鹿...」

力なく呟いた。


何とか復活することが出来て再び買い物に付き合ってもらう。いつもよりたくさんお店を回る。一緒に居られるうちになるべくたくさん傍に居たかったから。



それから数日後、高校の卒業式があった。

あたしは大学も決まって、一郎に報告をした。一郎は苦笑しながら「良かったな。」って言った。...何か変なことやってた?

「じゃあね、一郎。見送りには行かないから、ここで一旦お別れだよ。」

「ああ、そうだな。」

「体に気をつけてね。一郎が帰ってくるまであたしは女を磨いとくよ。」

「それは、楽しみだな。も元気で。」


余計に寂しくなりそうだったから一郎が日本を発つまでに会うことはしなかった。





一郎が日本を離れて1年近く経った。


部屋で本を読んでいると携帯が鳴る。

見てみると公衆電話から?

いつもなら無視するけど何となく出たほうがいいと思った。

「もしもし。」

『俺だけど。』

この声は。絶対に間違うはずがない。私が世界一好きな声。

「一郎?!どうしたの、今どこ?」

の家の近くの電話ボックス。部屋から見えるんじゃないか?今出てこれるか?」

慌てて窓に掛かっているカーテンを開いた。あたしの部屋からその電話ボックスは見える。

窓から顔を覗かせようとして、思いっきりおでこをぶつけた。


...うん。窓を開けるの忘れてたね、あたし。


「痛いぃ。ああ、見える、いたいた。今すぐ行く。」

そう言って電話を切って部屋着のまま急いで部屋を飛び出す。


家から出て一郎の居る電話ボックスにまっすぐ走る。

「一郎!」

名前を呼びながらスピードを上げてそのまま一郎の胸に飛び込んだ。

一郎はそれを受け止めて、抱きしめてくれる。

一郎の、心臓の音。

「久し振りだな。」

「うん、そだね。一郎、浮気しなかった?」

少し見ないうちにカッコ良くなったと思う。ちょっと心配。

でも、

「言ったろ?お前以上のいい女なんてそうそう居ないって。...は、綺麗になったな。」

一郎がそんなことを言うから

「...うわぁ、一郎がタラシになって帰ってきちゃった。リップサービスもできるようになったんだ?」

と照れと動揺を隠さないといけなくなる。

「お前以外の女にこんなことは言わねぇよ。」

お願い、トドメは刺さないで...。


そのまま少し抱きしめられていた。一郎の優しい心臓の音は落ち着く。

、ただいま。」

一郎が微笑みながら言う。

「おかえり、一郎。」

あたしはとびっきりの笑顔で応えた。




煮え切らない一郎さんに業を煮やすヒロイン。
この話の一郎さんって、案外『ヘタレ』かも...(笑)
次回一郎さん視点で最終話です。
よろしくお願い致します


桜風
05.6.29


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