彼女と彼の間には―side彼― 4





鴨川ジムを出てからデビュー戦の日が来た。

試合はもちろん勝った。


ホールを出たところである人影が目に入った。

後ろ姿だったけど、私服姿だからよく分からないけど、何となく...

?」

振り返ったそいつはやっぱりで片手を上げて「よっ!」と軽く声を返してきた。

「どうしてこんなところに居るんだよ。」

がこっちに来たから聞いてみる。

「ボクシングの試合を見に来たに決まってんじゃん。それ以外でどうしてこんな時間にここにいるのよ。こんばんは。」

俺の疑問にやっぱり可愛げ無く答えては後ろにいる父さんに挨拶をした。周りを見渡してもこいつと一緒に来たような奴はいない。

「独りでか?」

「そうだよ。デビュー戦だったんだってね。おめでとう、初勝利。宮田のやってたスポーツってボクシングだったんだ。アンタってホント意外な男だね。」

「『意外な男』って何だよ。」

「宮田って格闘技なんてやりそうにないじゃん。ボクシングってもっとゴツイのがやるもんだと思ってたからね。」

まぁ、普通の奴はそう考えるのかもな。

「父さん。俺、こいつ送っていくから先に帰ってくれないか?」

父さんの了承の返事を聞いて

「お前の家どこだよ。」

と聞いた。

「え?いいよ、独りで帰れるから。宮田は試合があって疲れてるでしょ?」

「全然。いいから。ここから帰る途中にに何かあったら俺の後味が悪い。」

そう言うと渋々自分の家の住所を言ってきた。


「そういえば、何でボクシングを見に来たんだ?」

「ウチの兄貴が今日が『宮田一郎』のデビュー戦だとかって騒いでいたから。あたしも『宮田一郎』って知り合いがいるから同姓同名の別人だったら面白そうだな、と思って。まさか、兄貴の言ってた『宮田一郎』があたしの知ってる『宮田一郎』だとは思ってもみなかったけどね。」

「兄貴なんているんだ?」

「まあね、2人ほど。一人は高校と大学で応援団やってた。今は一応社会人。もう一人は大学でアマチュアのボクシングやってるよ。」

「ふうん。」

それでこいつはサバサバした性格なのか...。

「じゃあ、俺の試合があるって言ってたのは。」

「ボクシングやってる方。兄貴が宮田のお父さんもボクサーだったって言ってたけど?」

「ああ、父さんもボクサーだったぜ。そういえば、その騒いでたっていう兄貴は?一緒じゃないのか?」

「今、修羅場になってるらしいから。彼女の機嫌を損ねて大慌て。他人の試合どころじゃないってね。」

「ああ、そう。」


そのまま帰りながら色々話をした。

も兄貴の影響でか、ボクシングのことはそれなりに詳しかった。

「ありがとう、宮田。家、ここだから。悪かったね、送ってもらって。」

「いや。じゃあな、また学校で。」


今度試合が決まったら、俺からに教えてやろうかなんて思った。




ボクシング以外のものにちょっとだけ興味を覚えた一郎さん。
ヒロインのサバサバした性格は一郎さんとしては結構ありがたいモノかと...


桜風
05.5.25


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