彼女と彼の間には―side彼― 6





準決勝、俺は負けた。約束は果たせなかった。


医務室で寝ていると控えめなノックが聞こえた。

 「ああ、さん。一郎の応援に来てくれていたんですか?一郎の意識はしっかりしていますから、心配ありませんよ。」

父さんが対応している。

 「あの、今お話しすることは出来ませんか?」

 「今、ですか...。いいですよ。少し席を外しましょう。」

事もあろうに父さんはの申し出に頷いた。

が俺の傍までやってきた。

「宮田...」

どの面下げてと話をすればいいんだよ。

そう思っていたら、次にの発した言葉は

「とことん落ち込め!」

だった。

...こいつ、何考えてるんだ?

「落ち込んで落ち込んで一番下まで行ったら、あとは上るしかなくなるよ。だから、どん底まで落ち込みな。あたしは宮田と一緒に沈んで行くつもりはないけど、でも仕方ないから上ってくるのは待っててあげるよ。だから、絶対..また、ここまで上が..ってきてよ。」

の様子がおかしい。

顔にかけてあるタオルを取ってを見てみると、泣いていた。

...」

寝たまま、膝をついているを抱き寄せた。

「大丈夫、大丈夫だから。少しだけ、待ってろ。」

は泣き笑いを浮かべて頷いた。



俺は入院することになった。は『見舞いに来る』と言っていたけど来るなって断った。

は受験生だしな。



何とか2学期のうちに退院できた。

期末テストを受けられなかったから追試のときにそいつらと一緒にするという救済措置が取られた。俺としては、卒業できれば成績なんて別にどうだっていいんだけどな。

久し振りに学校に行くとクラスの奴とかが声を掛けてくる。入院中、見舞いに来た奴の誰とも会わなかったから余計に心配したらしい。


放課後、図書室に行った。

。」

図書室に残って勉強していたに声を掛ける。

「宮田...。おかえり。」

は笑顔で答えた。

「ただいま。」

「ごめん、先に帰ってて。もう少しここにいるつもりだから。」

「いい。待つ。」

幸いここは図書室だから時間を潰す材料に困らない。

適当に本を見繕って読む。こうやってゆっくりするのは久し振りのような気がした。入院中は忙しいことはなかったけど、精神的に休まらなかった。

本から顔を上げて目の前にいるを見る。こいつがいてくれて良かったと思う。

「何?」

俺の視線に気付いたが顔を上げて聞いてきた。

「いや、何でもない。」

今考えていたことを言うのはなんだか照れくさくて、適当に誤魔化した。




一郎さんは意外と本好き。
私的にそんなイメージです。
体を休めないといけないときは読書をして過ごすとか。
若しくは、寝て過ごす(笑)


桜風
05.6.22


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