彼女と彼の間には―side彼― 7





3学期になってから授業は殆どなく、学校にも行かなくて良くなった。それに関しては嬉しいけど、の顔を見ることも出来なくなった。

家を知っているし、携帯の番号も知っているから連絡を取ろうと思えば出来ないことはないが、やっぱり受験勉強の邪魔をするわけにはいかない。



2月のある日、家に電話がかかってきた。

父さんが出て、俺を呼ぶ。

「誰?」

「いいから早く出てあげなさい。」

「もしもし?」

父さんから電話を受け取って出てみると、

『宮田、遊べ!!』

大音量でそんなことを言う。電話を掛けてきたのはだった。

「遊べって...お前受験は?」

『今日終わった。だから遊べ!!』

「...分かった。」



翌日、待ち合わせ場所に着くと既にがいた。

「悪い、待ったか?」

「うん、とっても!」

...こいつの可愛げのなさも久し振りだと可愛く感じる俺はもう末期だろうか。

「冗談だって。そんなに待ってないし、時間前じゃん。そうそう、あたしさっき気付いたんだけど、今日が初デートってやつだよ。」

「...そう言えばそうだな。」

私服姿なんて初めてじゃないし、2年のときから結構毎日顔を合わせていたから全然思わなかったけど、言われてみれば今まで待ち合わせてどこかへ行くなんて事はなかった。待ち伏せならされたことあるけどな。

それなら、と思っての手を取った。

「な、何?」

「この方がそれっぽいだろ?」

突然手を握られたは驚いて顔を赤くする。そんなを気にすることなく俺は歩き出した。


のリクエストどおりに映画を見て買い物に付き合う。

「あー、体力落ちたわ。殆ど引きこもり生活だったからなぁ。」

「じゃあ、どっか入って休憩するか?」

アレだけ色んな店を梯子したのに体力がないって言うんだから体力あったときはどうだったのか、少し気になるところだ。


適当に喫茶店に入って休憩することにした。

。」

今日、言っておかないといけない。

「何?」

「俺、高校卒業したらボクシングで海外、タイとか韓国とか回るんだ。」

「...そうなんだ?」

「それで...」

言ってもいいのだろうか。俺にそんな事を言う権利はあるのだろうか。

言葉を呑んでしまう。

「ああ、もう!またあたしから言うぞ?!」

焦れたようにが言ってきた。

「仕方ないな、待っててあげるよ。」

「いいのか?」

「当然!浮気すんなよ、一郎。」

が悪戯っぽい笑顔を浮かべて言ってきた。

突然のの言葉に驚いたけど、

「当たり前だろ?お前以上のいい女なんてそうそう居るはずないからな。」

とカウンターを返してみるとはテーブルに突っ伏した。首まで赤い。

その姿勢のまま「一郎の馬鹿...」と呟いている。

...ちょっとやりすぎたか?


その後、何とか復活したの買い物に再び付き合わされてそれなりに疲れた。



それから数日後、高校の卒業式があった。

は大学も決まって4月から女子大生になると小躍りしていた。

「じゃあね、一郎。見送りには行かないから、ここで一旦お別れだよ。」

「ああ、そうだな。」

「体に気をつけてね。一郎が帰ってくるまであたしは女を磨いとくよ。」

「それは、楽しみだな。も元気で。」


俺が日本を発つまで再びに会うことはなかった。




1年近くの海外での生活は終わり、日本に帰ってきた。


帰ったら一番にやろうと思っていたことがあった。


家に荷物を置いて、そこへ向かった。

近くの電話ボックスから電話を掛ける。

『もしもし。』

公衆電話からのコールだからか、少し警戒した声を出している。

「俺だけど。」

『一郎?!どうしたの、今どこ?』

の家の近くの電話ボックス。部屋から見えるんじゃないか?今出てこれるか?」

そう言ったらの家の一室のカーテンが開いた。

久し振りに見たは宣言どおり女を磨いたのか、随分と落ち着いた感じになっていた。


...俺の勘違いだ。


窓を開けるの忘れてそのまま窓に激突したおでこを抑えて痛みに耐えている。相変わらず落ち着きがないようだ。

『痛いぃ。ああ、見える、いたいた。今すぐ行く。』

そう言って窓も閉めずに顔を引っ込ませて電話も切った。


電話ボックスから出てを待った。

「一郎!」

は走りながら俺を呼び、そのままの勢いで抱きついてきた。

俺はそれを抱き止め、抱きしめる。

「久し振りだな。」

「うん、そだね。一郎、浮気しなかった?」

「言ったろ?お前以上のいい女なんてそうそう居ないって。...は、綺麗になったな。」

「...うわぁ、一郎がタラシになって帰ってきちゃった。リップサービスもできるようになったんだ?」

真っ赤になりながらは言った。照れ隠しなんだろう。

でも、何となく、ちょっとムカついたから、

「お前以外の女にこんなことは言わねぇよ。」

と、トドメも刺しておいた。


そのまま黙って抱きしめる。久し振りのが心地いい。

、ただいま。」

そう言うと、

「おかえり、一郎。」

と綺麗な笑顔を向けてきた。




イヤ、もうホント。
貴方は誰デスカ?!状態の一郎さんですね。
というワケで、このシリーズの最終話です。
読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!!


桜風
05.6.29


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