| チラチラと雪が舞う。 空を見上げると薄っすらと雲は掛かっているが、概ね青く、だからそれが風花だと思った。 宮田が『風花』という言葉を知ったのは、数年前の今の時期だ。 という女性に聞いた。 彼女は変わっている。 と、宮田は少なくとも思っている。 自称、『渡り鳥』だそうだ。 宮田は彼女の素性は知らない。別に知らなくても困らないから知ろうとも思っていない。話したくなれば話す。おそらくそんな性格だ。 宮田がを初めて見たのは中学3年の冬のことだった。 宮田のロードワークのコースに入っている川沿いの都市公園で川に向かってカメラを構えている。 丁度、休憩するにはいい距離のところなので、宮田はそこで休憩をすることがある。 だから、暇つぶしに同じところから同じようにカメラを毎日構えている彼女を観察した。 自分がここに来るのは大抵決まった時間だ。 だから、彼女がカメラを構えているのも同じ時間。 しかし、シャッターを切っているときと切っていないときがある。 宮田の目から見た風景はどの日も変わらない。 勿論、一口に冬と言っても12月から2月の間に、同じ時間で日の傾きや天候などで見える景色は違うが、同じ晴天であってもそんな違いがある。 不思議だな、と思った。 もしかして心霊写真でも撮っているのだろうか、と思って自分の思考に苦笑をもらしたことがある。 宮田が彼女と言葉を交わしたのはその翌冬のことだった。 川のほうに体を乗り出してカメラを構えている。 手すりがあるが、あれだけ体を乗り出していては、と思った矢先に彼女の体は傾いだ。 宮田は慌てて地を蹴り、彼女の腰に腕を回して何とか落下を防いだ。 しかし、彼女はあろうことか、 「もうちょいそのまま」 と言ったのだ。 手を離してやろうか、と思ったが彼女を支えるために走った自分の親切心を踏みにじることは出来ないし、何より、カメラを構えている彼女の挑むような横顔に思わず見とれてしまった。 「ひっぱってー...」 少しして彼女が言う。 言われるままに宮田は彼女の体を引き寄せてやった。 「ありがとう、助かったわ」 「次はないぜ」 そう言って宮田は回れ右をし、そして、振り返った。 「あんた、何撮ってたんだ?」 「景色」 それはわかる! 一瞬怒鳴りそうになって気持ちを落ち着けるために深呼吸をした。 「そこまでは、何となくわかるけど。景色っていっても色々あるんじゃないのか?」 「ええ、だから色々」 だめだ、会話できない... 知りたいと思ったが会話が成立しないのであれば諦めるしかない。 「じゃ、次は気をつけろよ」 そう言って駆け出した宮田に「ねえ、」と彼女が声を掛けてきた。 なんとマイペースな... 無視しようと思ったが、思わず足を止めてしまったので振り返った。 「君は、何で毎日同じ時間に走ってるの?」 「日課だよ。トレーニングだから」 「そう。じゃあ、明日もここを走るの?」 「走るけど?」 「わかった、ありがとう」 そう言って彼女は宮田に背を向け、またカメラを構える。 「何だったんだ...」 へんなのに関わってしまった... そんなことを思いながら宮田は残りの距離を走るために、公園を後にした。 |
桜風
12.3.3
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