きらきら星 6





!」

ある日、がいつもの時間に学校へ向かっていると後ろから聞き慣れた声が自分の名前を呼ぶ。

振り返ると、自分の予想通り声の主は千堂武士。

は慌てて自分の時計を確認した。いつも遅刻ぎりぎりの千堂と登校が同じになる、つまり、今はかなり時間がないということになる。

しかし、時計を見ても8時10分。ここからなら学校まで5分もあれば着く。家を出るときに時計は確認しているし、時計が止まっている様子も無い。


「おはよう、千堂君。」

一応足を止めて千堂が追いつくのを待っていたは千堂に声を掛ける。

「おはようさん。」

追いついた千堂と共に学校へ足を進める。

「どうしたの?今日は早いね。」

にコレあげよ思ってな。」

そう言った千堂が紙を渡してきた。

「何?」

「ワイのデビュー戦のチケットや。見に来たって。」

(そういえば、少し前にプロ試験を受けてライセンス取ったって言ってたなぁ。)

「そっか、じゃあ千堂君の記念すべき初の公式戦だね?」

「そうや!やっとあのリングの上でボコれる!!」

何だか微妙に違う気がしたがあえてその発言を流した

「用事も入ってないし、行かせてもらうよ。」

と返事をしておいた。



そして、千堂のデビュー戦の日。

「へぇ、結構人来てるんだ。」

ボクシングを見に来る人がこんなにいるとは思っていなかったは感心する。

指定されている席に着き、千堂の試合が始まるのを待った。


入場してきた千堂を見て、は驚いた。

今の千堂は、学校やいつもの公園で見る千堂とはまるで別人だった。

ふと、千堂がこちらを見てきて拳を突き出してくる。

千堂と目が合ったは思わず赤面して俯いてしまった。

試合開始のゴングが鳴った。

「あれ?」

ゴングの音と共に顔を上げたは首を傾げる。

「...もう、終わっちゃったの?」

試合開始してすぐに相手がダウンした。

今は千堂の腕がレフェリーによって高々と掲げられている。

最後まで他の試合を見たほうがいいのかなとも思ったが知らない人の試合を見てもなぁという考えに行き着いたは席を立ち、会場をあとにする。


建物から出て帰ろうとしたとき、

。」

という声が聞こえた。

「千堂君。初勝利、おめでとう。柳岡さん、こんばんは。」

後ろから声を掛けてきた千堂と、その隣にいる柳岡に挨拶をする。

「おおきに。せやけど、何で控え室に来てくれんかったんや?」

「控え室?...って、どこ?」

「何や、千堂。自分が教えとらんかったんやないか。」

柳岡が呆れながら千堂を小突いた。

「ワイ、言っとらんかった?そら、悪いことしたな。ま、次の試合のときは来たって。ちゃんと教えるよって。」

さん、これからこいつの祝勝会するんですわ。一緒に来ませんか?」

「そうや、一緒にどうや?」

「そうだね。それじゃあ、ちょっとだけ。」


祝勝会では皆が嬉しそうで、は何だかさっきよりも嬉しくなった。


千堂とは明日も学校があるので早めに帰される。

「主役が居らんのに、何の祝勝会やの。」

途中で追い出される形となった千堂がブツブツ文句を言っていた。

そんな千堂には苦笑をしながら、

「まあ、まあ。」

と言って宥めていた。

「そういえば、千堂君。ボクシングってあんなに早く終わるものなの?」

「いや、全部がそういうわけやないけど、今日のはホンマあっという間に終わってしもた。ちょこんと当てただけやのにな?」

(『ちょこん』?)

千堂のパンチがヒットしたときの様子を『ちょこん』と表現するのに抵抗があったは、心の中で千堂の言葉を繰り返していた。


「ほな、今日はありがとな?」

「こちらこそ、楽しかったよ。も1回。千堂君、おめでとう。...かっこよかったよ?」

「...おおきに。」

の住んでいるマンションの前まで送った千堂はそう言って走って帰っていった。

チラッと見えた千堂の顔が赤くなっていることに気づいたは笑を堪えながら千堂の背中を見送る。



(千堂君、可愛い...)

などと思っていたことは、当然千堂本人には言えない。




千堂のデビュー戦。
さっさと終わってしまったに違いありません(笑)
そして、それを見て『これがボクシング』と認識してしまうと面白いと思う試合が少なくなりそうな気がします...

桜風
05.1.14


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