きらきら星 10





が日本を離れてから数ヵ月後のアメリカ。



はいつも決まったところでサックスを吹いていた。

の留学というのは大学とかそういうのではなく、とにかくアメリカというところで挑戦してみたい、そう思ったものだった。

「ああ、やっぱり、今日もいた。」

声を掛けられて目を向ける。東洋系の顔をした2人が片手を上げて近づいてきた。一人はすらりとした女性。もう一人は熊みたいな男の人だった。

は少し構える。

「まあ、そんなに警戒しないで。あなた日本人?日本語で話しても良いかしら?」

「...どうぞ。何の御用ですか?失礼ですけど、お名前は?」

「あたしはサヤ。こっちの熊はシュウ。貴女は?」

です。」

さんだね。実はね、あともう一人メンバーがいるんだけど、私たちは3人でサックスの演奏をしているんだ。それでね、さんがいつもここでサックスを演奏しているからさんも一緒にやってみないかと思って。どうかな?」

いきなり『どうかな』と言われてもは悩む。相手が信用に値する人間かなんて分からない。

そんなの様子を見たサヤが、紙を取り出して地図を描く。

「ま、いきなり言われても困るよね。ごめん、ごめん。時間があるとき、この店に来てみなさい?あたしたちが演奏しているから。音を聞いてから考えても良いでしょ?」

そう言って2人は去っていった。



数日後、地図を頼りにはその店に行く。

ドアを開けるとそこでは先日の2人ともう1人がサックスを演奏していた。

を目にしたシュウが突然マイクを持って、

「今日は飛び入りゲストだ、!一緒に演奏しよう。」

と言ってきた。演奏を聞いていた店の客たちが拍手をしている。

いつも持ち歩いているからサックスはあったけど、誰かと一緒に演奏したことがないは困惑していた。

サヤが舞台から降りての手を引いて再び舞台に戻る。

「ほら、準備しな。」

「でも、私、誰かと一緒に吹いたことないんです。」

「じゃあ、あたしたちが栄えある第一号なんだ?良いよ、好きに吹きな。あたしたちが合わせてみせるからさ。」

そこまで言われると断れないのでは急いで準備をして自分の演奏できるジャズを演奏し始めた。

残りの三人も見事にの演奏に合わせて演奏が終わる。


その日の演奏が終わったあと、先ほどの三人と一緒に食事をすることになった。

「そうそう、この子がもう一人のメンバー、トモヤだよ。」

「初めまして、です。」

自己紹介をして軽く会釈する。

「トモヤだ。よろしく。」

「まあ、挨拶はそれくらいにして。どうする、さん。一緒にやってみないか?」

「あの、さっきも言ったと思うんですけど、私、『誰かと一緒に』ってやったことなかったんです。」

「でも、さっきやったじゃないか。」

トモヤが言ってきた。

「それは、皆さんがフォローしてくださったから...」

「そんなもんよ、『皆で』っていうのは。楽しかったでしょ?」

「はい、楽しかったです。」

「じゃあ、決まりだな。良かったな、トモヤ。」

シュウの言ったことの意味が分からなくてトモヤを見ると、トモヤはバツが悪そうに視線を逸らす。

「トモヤがを見つけて言い出したんだよ。あの子も一緒にどうかって。そう言われてあたしたちも何回かあそこに通っての演奏を聞いたの。それで、『この子だ!』って思ったからスカウトしたのよ。ヘタっぴならあたしたちだってスカウトしない。あたしたちの心の琴線に触れたのよ、の音がさ。じゃ、ヨロシクね、。新たなメンバーに、乾杯!!」





三人と一緒にサックスの演奏をするようになって数ヶ月が経った。

はサヤと一緒に住むようになった。家事の分担も出来るし、一人暮らしよりも安全だ。シュウとトモヤも同じアパートに住んでいて、ご飯は大抵一緒に食べるようになっていた。

シュウは自分の父親くらいの年齢ということもあって、なんだかお父さんみたいだし、サヤは面倒見のいいお姉さん。そして、トモヤは...微妙だな、と思っていた。


そんなある日、トモヤがボクシングを見ないかと誘ってきた。

「サヤさんから聞いたんだけど、ってボクシング見るんだって?今度一緒に行かないか?」

「...いいよ。」

自分がボクシングを見るのは気付かれないようにしていたつもりだが、サヤにはバレていたらしい。

(テレビのニュースでちょっと映っているのを見ていただけなのになぁ。)


トモヤと見に行った試合はそれなりに大きなものだった。

試合が終了して勝者が拳を突き上げて歓声に応えていた。

ふと、思い出してしまった。涙が零れる。

、どうした?どこか痛いのか?」



     『、どないしたんや?どっか痛いんか?』



いつも優しかった彼を思い出す。

...?」

「心が、痛いよぉ...」

自分はその優しい彼を傷つけた。


「ごめんなさい...」

は遠い海の向こうにいる愛しい人に謝罪していた。




トモヤって立場無いんですよねー...
彼には申し訳ないですが、こういう役回りに立ってもらってます。
う〜む。本当に申し訳ないなぁ...

桜風
05.2.11


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