| 宮田とに手を繋いでもらって上機嫌のコータは先ほどに叱られて大泣きしていたのに、そんなことはすっかり忘れたという様子だ。 「現金だな」 「まあ、子供ってそうじゃないの?」 宮田の呟きにが苦笑しながら応える。 「ゲンキンって何?」 「今のコータみたいなやつの事をそういうんだよ」 宮田が言うと 「凄く嬉しいことなんだね」 と返されて言葉に詰まった。 宮田のそんな反応をは肩を震わせて笑いを堪える。 宮田は肩を竦ませて「じゃあ、それでいいよ」と投げやりに呟いた。 1度、足を挫いたを負ぶって彼女たちの住むアパートには来たことがある。 少し古いな、と思ったそのときと同じ感想を抱きながら促されるままに家の中に足を踏み入れた。 「ご家族にご飯要らないって電話した方がいいでしょ?」 にそう言われて、食事はともかく、今日はジムメイトたちの試合に行けなかった旨は話しておいたほうがいいだろうと思って電話を借りた。 今日は彼らの試合のため、会長とマネージャー八木さん、そして彼らのコーチである篠田さんはジムにいない。 だから、留守を任されているのは父だ。 ジムに電話をするとやはり父が出てきた。 今の状況と用件を話すと 「あまりそちらに迷惑を掛けるなよ」 と言われた。 どちらかといえば、迷惑を被ったのは自分だ。何となく釈然としないが「分かったよ」と返して電話を切る。 「家の人、大丈夫だった?」 が伺うように聞くと 「ああ、『さんちに迷惑掛けるなよ』って言われたくらいだな」 と応える。 「私たちが宮田くんに迷惑を掛けたのにね」 は苦笑しながらそう言い、とりあえず、これから食事を作るため時間が掛かるからとコーヒーと茶菓子を出してきた。 「コータはお風呂に入りなさい」 「やだよ。ボク宮田のお兄ちゃんに遊んでもらうんだ」 そうか、遊んでやらないといけないんだ... 疲れそうだな、と思いながら宮田は溜息を吐く。 「あ!わかった!!宮田のお兄ちゃんもボクと一緒にお風呂に入ればいいんだよ。ね!」 「はあ!?」 もの凄くいいことをひらめいたと得意満面でコータが言う。 「コータ。それ以上宮田君にわがままを言うんだったらお姉ちゃんにも考えがあるよ」 そんな事を言うにコータが怯える。 「今日の夕飯。ハンバーグを変更してピーマンの肉詰め」 「ボク、お風呂入ってくるー!」 素早く箪笥から着替えを漁ってコータは部屋から出て行った。 「流石だな」 宮田が呟くと 「伊達に7年お姉ちゃんしてませんよ」 とは胸を逸らせて笑う。 夕飯は、コータがちゃんとお姉ちゃんの言うことを聞いてお風呂に早く入ったので彼のリクエストらしいハンバーグが食卓に並んだ。 「コータ、お父さんに会いたいの?」 が問うとコータは箸を動かす手を止めて俯く。 「うん。ボク、パパとお話したい」 「じゃあ、お母さんにお願いしてみよう。今回みたいに勝手にお父さんに会いに行こうとかしないで。お姉ちゃんも一緒に頼んであげるから。一生懸命お願いしたらお母さんも良いよって言ってくれるかもしれないし」 「ホント?」 「わかんないけど、頑張ろう」 の言葉を受けてもの凄く真剣な瞳をしたコータが頷いた。 なにやら決心したようなそんな表情だ。 食事が済んで暫くしているとコータが舟を漕ぎ始めた。 「コータ、布団で寝なさい」 「やだ。まだ遊ぶ」 そう言いながらも彼は後ろに倒れそうになり、宮田が慌ててその後頭部を受け止めた。 は立ち上がって隣室に布団を敷く。 「俺が運ぶか?」 「ああ、いい。慣れてる」 そう言いながら戻ってきたは重そうにしながらもコータを隣室に運んで布団を掛ける。 「ホント、今日はごめんね?」 「いいよ。元はといえば、俺が言い出して手伝ったんだし」 「でも、宮田君が居てくれてよかった。ありがとう」 「...まあ、さんとの縁は転校初日からだしね」 は首をかしげる。 「忘れたのか?ほら、卵...」 は視線を逸らせて頬を掻く。 「ああ、ありましたねぇ。ええ、本当に宮田くんにお世話になりっぱなしで...」 歯切れ悪くそういうに苦笑しながら 「ま、しょうがないよ。隣の席になった誼として諦めるさ」 と返した。 「いやぁ、宮田君がいい人でよかった」 が笑って言うと 「何だよ、それ」 と宮田も笑った。 |
桜風
08.11.22
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