Red1





ある日、千堂商店の隣の(ボロ)アパートに引っ越しがある様子があった。


家を出るときにその様子を見ていた千堂は練習から帰ってからずっと家に居た祖母に聞いてみた。

「なあ、婆ちゃん。隣に引っ越して来たんおるんか?」

「みたいやな。ほれ、そこの引越し蕎麦。その人がくれたんや」

「いまどき引越し蕎麦て、珍しな」

律儀な人が居たもんだ、と思いながら千堂はそう呟いた。

「美人やったで?はん言うてたな」

「女?!あんなボロアパートにか?危ないんやないんか?」

どう考えてもセキュリティが宜しくない。

「まあ、そう思うんなら武士が気にしておいてあげたらええやろ」

「何でワイが...」

「引越し蕎麦貰うたお礼や」

プロボクサーといえども、婆ちゃんの一言には勝てない。

(まあ、気にするだけやし。何も無かったらそれでええしな)

そう思って千堂も気軽に構えていた。

しかし、それは当初の予想とは大きくかけ離れたものとなった。


(アレか...)

偶然アパートから出てきた女性を見かけて千堂は近づいた。

引越し蕎麦のお礼を言うためだ。

はん」

「はい?」

名前を呼ぶと何だか背筋が痒くなった。

そして、振り返ったを見て、千堂は驚いた。想像していた『』という女性はもっとしっかりした印象を受けるのだと思っていたのに...

目の前にいる『はん』は、何だか頼りない印象を受ける。

「えーと、何処のどなたでしょうか?」

「あ、ああ。隣の千堂や。この前は蕎麦、おおきに」

先日のお礼を言うと

「ああ、お婆ちゃんの言ってたお孫さんですね?初めまして。です。以後お見知りおきを」

と言って深々と頭を下げた。

「こっちの方こそ、よろしゅう。千堂武士や」

と、つられながら千堂も自己紹介をした。


翌日、千堂が家に帰ると子供が群がっていた。

その中心にいたのが

はん...?」

だった。

「あ、千堂くん。お帰り。聞いたよ、プロボクサーなんだって?」

笑いながらそう声を掛けられた。

「まあ、な」

「千堂選手のことはどうでもええやん。姉ちゃん、僕らと遊んで」

(『僕』って誰のことや?!)

いつもの悪ガキ風なところを見せない近所の子供に千堂は半眼になったが、彼は気にせずの腕を引く。

「ええ〜?イマドキのお子様は何をして遊んでるの?」

冗談めかしてがそう言う。

「おにごっこ!」

「かくれんぼ」

そう元気に答える子供たち。

「あ、なんだ。私がお子様のときと一緒か」

が呟く。

「...千堂くんも、一緒にどう?」

突然誘われて千堂は一瞬驚いたが、店の中に居る祖母を見た。

店番をしなければならないかもしれない。

店内で店番をしていたお婆ちゃんは、行ってこいと手を払った。

「よっしゃ!鬼ごっこか?それともかくれんぼか?どっちでもワイは強いで!」

「ああー、そんな感じ」

千堂の言葉をきいては苦笑しながらそう言った。

その後、近所の公園では子供たちよりも必死に遊んでいる大きな2人の姿があった。





今年度は、連載でお誕生日をお祝いです!
キャラによって話数が違うと思いますが予めご了承ください。


桜風
06.5.5



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