Red4





クリスマスが終わったある日、千堂はハタと気が付いた。

は大阪に来てから一度も実家に帰っていない。毎日顔を見ているのだから間違いないはずだ。

今もこうして千堂家のコタツでミカンの皮を剥いている。

「なあ、帰らんでもええんか?」

「お隣じゃん。もう少しぬくぬくさせてよ。はい、どうぞ」

皮を剥き終わったミカンを千堂に渡す。

「おおきに。そうやなくて。実家や。帰らんと親御さんたちは心配するんやないんか?」

の剥いてくれたミカンを口に運びながら千堂はそう言った。

「あー、うん。もう今回の冬休みは帰らないって連絡入れてるし。お母さんたち、心配してないよ」

そう言いながらミカンの皮を剥いているの瞳は何だか物悲しそうに見えた。

(そういえば...は家のコト、いっこも話さんな...)

そんなの横顔を眺めながら千堂はそう思った。


千堂に言ったとおり、が実家に帰る気配が無い。

そうこうしているうちに、大晦日となった。

「おばあちゃん。どうかな」

「うん、ええ味付けやな。ちょお、関東っぽいのは仕方ないわな」

「え、濃いかな?」

「ええよ。美味しいことに変わらんし」

(何や、不思議な光景やな...)

自主トレのロードワークから戻ってきたら台所でと自分の祖母が一緒に御節を作っている。

「ただいま」

「あ、千堂くんお帰り。丁度良かった。そのテーブルの上のメモに書いてあるものの買い物、お願い!」

「ええよ。ほな、ちょお行って来るわ」

そう言って千堂はまた家を出て行った。

「男手があるっていいですね、おばあちゃん」

「そうやなぁ」

「まあ、千堂くんは『ジェントルマン』らしいですから」

「あの子がそんな事言うたんか?」

「結構前ですけどね。おばあちゃんの育て方が良かったんですね」

「そうか」と言いながら千堂の祖母は微笑んだ。


結局、はその後も千堂家に居座り、年末恒例の歌番組を最後まで見た。

「ついでやから、初詣も一緒に行くか?」

年越しそばを食べ終わって一息ついた千堂が声を掛けた。

「ホント?あ、でも家族団欒を...」

「ええよ。ばあちゃんはいつも元旦は行かんし、ワイもいつもなら三箇日過ぎてから行くんやけど、行きたいやろ、は」

「うん!私いつも元旦派だから」

「ほな、人ごみに揉まれに行こか」

千堂が立ち上がるとも急いで立ち上がり出かける支度を始める。


「ねえ、千堂くん。いいおばあちゃんだね」

「ん?まあ、そうやな」

「千堂くんのご両親は亡くなったって聞いたよ」

「そうや。ワイの自慢のおとんとおかんや」

「うん」

その後、神社に着いては遠い目をしながら千堂に引っ張られて境内を歩き、お賽銭を取り出して拍手を打った。

ふらふらになりながらもおみくじを引き、千堂の引いた『凶』を笑ったは『大凶』だった。

2人で笑いあってそして、絵馬を書いて破魔矢を買った。

千歳飴と千堂は騒いだが、それは七五三である。





お正月まで一緒に過ごしているヒロイン。
既に家族の一員ですね。
あ、トラ。あんまり出てきませんね...
あの子も家族の一員ですよね。今更ですけど(苦笑)


桜風
06.6.3


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