| Red5 |
| 流石に人ごみに揉まれて疲れたので少しゆっくりしようという話になり、お店に入った。 「ねえ、千堂くん。ちょっと前に、私が何で帰らないか聞いたよね?」 聞いてはいけないことだったと思ったので、あれ以来千堂はの家族について聞いていなかった。 「まあ...聞いたな。せやけど、言いたくなかったら言わんでええよ」 「ううん、ジェントルマンな千堂くんだから話そっかなーって思っちゃった」 そう言ってコーヒーを一口飲む。 「あのね、去年、じゃない。一昨年の10月ごろ。私の母が再婚したの。お父さんは私の小さいときに亡くなったんだって。お父さんは、警察官でたまたま通りかかって川で溺れている子を助けて...それこそ、小さいときだから覚えていないけど。 それから、母は女手ひとつで私を育ててくれたの。そして、大学2年になったときに母に今の父を紹介されて、結婚を考えているって言われたの。 正直、驚いた。今まで私を一生懸命育ててくれたし、その母を支えてくれていたのはその人よ。でも、何だかすんなり受け入れられなかったの。だから、編入を考えた。一生懸命勉強して奨学生を続けれるように頑張って、大阪に出てきてみたの」 「おとんのこと、嫌いなんか?」 「ううん、嫌いじゃないし、良くしてくれてるよ。でも、受け入れることが出来ないって言うか...なんだろうね。ホント、嫌いじゃないの。でも、やっぱりよそよそしくしちゃう、かな?」 「おかんを取られたみたいで、イヤなんか?」 「そうなのかな?...そうかも。でも、そうね。いい加減わがままを通すのはやめようかと思ってるわ。今度の春休みには帰るよ。一番長い休みだし。お母さんとお父さんとゆっくり、たくさん話してみるよ」 そう言って冷めたコーヒーを飲んだ。 「そうか」と言いながら千堂もコーヒーを口にした。 「ありがとね、千堂くん。千堂くんのお陰だ」 「ワイは何もやっとらんやろ?」 「ううん、話を聞いてくれた。話したいと思った、思わせてくれたよ。ありがとう」 そう言って笑うの笑顔は今まで見たものとは違って見えて、千堂は驚いた。 「『ありがとう』って、何や、こそばゆいな」 そう言って千堂は照れ隠しに苦笑した。 「じゃあ...お、『おおきに』?」 「下手やなぁ」 千堂は、の言葉に今度は笑った。 も照れ笑いを浮かべている。 家に帰ると千堂の祖母がお汁粉を作ってくれていた。 それを食べた後、コタツにうつ伏せて寝る千堂との姿があった。 「孫がもう1人増えたなぁ」 千堂の祖母はそう言いながら毛布をかけてやった。 「じゃ、千堂くん。4月までには帰ってくるね」 荷物持ちとして付いてきた千堂にはそう言った。 「大学生いうんのは楽なんやなぁ。もう春休みか?2月の半ばやで」 そう言いながら自分が持っているの荷物を渡す。 「そうよー。楽よ〜、って今年は就職活動だわ...」 そう言って肩を落とすに千堂は苦笑をした。 本当に表情がコロコロ変わる。 「ほな、またな?」 「うん。色々とありがとう、じゃなかった。色々とおおきに!」 そう言っては笑顔で東京へ帰っていった。 「何や、静かやな...」 が居なくなってそんなに時間が経っていないのに、寂しさを感じた店番中の千堂は、カレンダーを眺めながら呟いた。 はトラブル体質だったために、何かと大騒ぎだった。 子供たちにも人気があって自分が帰ってくるとまだ店の前で子供たちと遊んでいるの姿もあった。 「なあ、千堂選手。姉ちゃんは?」 店の中にやってきた子供たちに声を掛けられた。 「東京に帰ったわ」 「えー?!もうこっち来んの?」 「4月にはまた帰ってくるて言うてたわ。それまで待っとき」 「分かった、千堂選手が苛めたんや。姉ちゃんかわいそー!」 「苛めんわ!ワイがを苛めるわけないやろ!」 そう、自分が苛めるはずが無い。 いつも危なっかしくて目が離せない彼女を、いつしか、守りたいと思い始めた自分が居た。 そんな自分に気づいたとき戸惑いがあったが、それと同時に悪くない気分になった。 千堂はカレンダーを眺めて再び溜息を吐いた。 4月までまだまだだ。 |
ちゃんと自覚済みの千堂。 毎日顔を合わせていた2人の1ヵ月半って結構長いぞ〜。 経験者は語ってるぞ〜(笑) 桜風 06.6.10 |
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