Red6





東京の実家に帰ったは忙しかった。

1年近く留守にしていたため、友人たちに誘われて色々と出かけていたのだ。

父親との和解もできた。

そもそも喧嘩や対立をしていたわけではないので和解も何も無いが、それでも、普通に会話が出来るようになった。

ちゃんは、就職どうするつもりだい?東京に帰ってくるんだよね?」

「え...?」

考えていなかった。

当たり前に大阪に居て、当たり前に千堂商店の隣のボロアパートに住んで。

そう思っていた。

「えーと、まだ決めてないよ。どうしようかって悩み中」

「のんびりしてるわね。もう友達は就職活動を始めてるんでしょ?」

母にそう言われ、言葉に詰まる。

確かに、ここ数日会った友人たちは既に就職活動の情報交換をしていたし、まだ活動を始めていないと話をしたら「相変わらず、のんびりねー」といわれたものだ。

「まあ、いいじゃなか。大学院って選択肢もあるし。今、ちゃんが最善だと思う選択をすればいいと思うよ」

そう言って笑った父の笑顔はどこか千堂を思い出させた。

「どうかした?ちゃん」

「ううん。お父さんの笑顔ってステキね」

そう言うと、父は目を丸くしたかと思うと、見る見るうちに赤くなり、俯いて「ありがとう」と小さく言った。


部屋に帰ってカレンダーを見た。

まだ時間はある。

しかし、大阪に帰るまでには目の前の赤い物体をある程度何とかしたい。

部屋がノックされ、返事を待たずにドアが開けられた。

わたわたと隠していたのだがやはり間に合わず

「あら、赤い毛糸球?」

母に見つかった。

「返事するまでドアを開けるの待ってっていつも言ってるじゃん」

「いいじゃないの。...ところで、これから夏よ?」

「知ってるよ」

「それとも、ちゃんだけ季節が違うのかしら?」

「一緒だよ。これから段々日も長くなって暑くなるんだよ。もう!」

ムキになる娘を見て母が満足そうに笑う。

「何よ?」

「ん?大阪、いいところみたいね」

「うん...」

「誰かにプレゼント?」

「うん」

「どんな人?」

「笑顔が、少しだけお父さんに似てる人」

「そう。それじゃ、とてもいい人ね」

そう言って微笑む母には半眼になって

「ノロケですか〜?」

と言うと、

「ええ、そうよ」

と言う母の言葉が返ってきて苦笑をした。

「ところで、それはいつまでに作りたいの?」

「クリスマスがダメだったから..誕生日。5月5日」

「...頑張った形跡は見られるけど。そうね、お母さんも手伝ってあげるわ」

「ダメ!お母さんは手を出さないで」

「大丈夫よ、出すのは口。さ、取り敢えずそれ。指が一本少ないからほどきましょ」

作りかけの手袋を指さされてそう言われたはうなだれながらも何度目かの『やり直し』に取り掛かった。


昼間は父が居ないのでみっちりと母に編み物の指導を受け、家事は2人で行った。

取り敢えず、手袋が完成した。

次の日の朝食時に

「お母さん、お父さん。私明日大阪に帰ろうと思うの」

「明日かい?!急だね...まだ3月の半ばだよ。大学なら4月に入ってからでも間に合うんじゃないのかい?」

「そうね、せめて3日前くらいには言って欲しかったわ...」

「ごめんなさい」

「まあ、大阪に行きたいなら仕方ないか。でも、ちゃんにとって大阪は『帰る』所なんだね」

「はい...」

言われてみればそうだ。

普通に『帰る』という気持ちになった。

「じゃあ、今日の夕飯は外で食べようか。折角だしね」

父のその言葉に母子揃って両手を挙げて喜んだ。


翌日、母の見送りの元、は大阪に向かった。





ヒロインの中で大阪は大きな存在となっています。
って、大阪かよ!!千堂じゃないのかよ!!
...勿論、千堂も十分大きな存在ですが。


桜風
06.7.1


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