おわり






あれからあたしは、また学校に行くようになった。

随分長く休んで、というか、サボっていたから皆心配してくれたみたい。

前とは違うたくさんの色で溢れている世界は楽しくて、そして、温かかった。


「お前、本当に卒業できるんだなぁ...」

感心したように達也が言ってくる。

「だから、言ったでしょ?皆勤賞の勢いで学校に行ってたって。実際あの登校拒否が無かったら皆勤賞だったもん、あたし。」

「...頑丈に生んでくれたおばさんに感謝するこったな。」

苦笑しながら言われた。

「そういや、卒業式の後、学校のヤツとどこか行くのか?」

「ううん、後日改めて騒ごうって話になってる。まだ進路決まってない人たちがいるからね。」

「それじゃあ、卒業式が終わった後どこか行かね?の好きなところにでもさ。」

達也がそう言ってくれてすぐに浮かんだ場所があった。

話してみると、達也は眉間に皺を寄せる。快く思っていないみたい。

そうは言っても、結局あたしに甘い達也は渋々ながらも了解した。

そこへ寄った後、買い物にでも行こうという話になった。



卒業式が終わったら正門のところに達也が立っていた。

何だか、そういうことは照れくさい。

クラスの友達に冷やかされながらあたしは走って達也の元へ向かう。

「ちょっと早く家を出たから。悪いな、正門前で待ってて。」

「...うん。いや、別にいいよ。」

しかし、何が可笑しいのか達也がクツクツ笑っている。

「なによ?」

「いーや。...お嬢さん、顔が赤いぜ?」

知ってるよ、それくらい。


あたしの荷物を達也がいつの間にか持っていて、そして、いつもの道を外れて数ヶ月前は良く通っていた道を歩いて目指す。

その角を曲がれば目的地。

深呼吸をしていると、

「...やっぱり、やめてもいいんじゃねぇの?」

達也が心配そうに声を掛けてくるけど、

「ダメ。これを乗り越えられなきゃあたしはずーと甘えてばっかになっちゃう。」

「だから、俺はそれでいいって言ってるだろ?」

「あたしは良くない。」

そう言って再び気合を入れると溜息交じりの苦笑が聞こえて

「まあ、頑張れよ。」

頭をポンポンと軽く叩かれた。


大丈夫。今のあたしの世界にはたくさんの色が溢れてる。


角を曲がってコンビニの前まで来る。

やっぱり都合のいい事に宮田くんがバイトに入っていて、そして、お店の中には独りだった。

ドアをまたぐと

「いらっしゃ...」

宮田くんが絶句した。

「...こんにちは。」

前のように籠を持ってお菓子をたくさん入れる。

そしてレジに持っていくと、何だか宮田くんが居心地悪そうにしていた。

「あの、さん...」

「あのね、前に世界に色が溢れてるって言ったの覚えてる?あたしの世界、1回色がなくなっちゃったの。でもね、今はまたたくさんの色が溢れてて、そして、それは前と違う輝きを持ってた。前のは...ただ、きらきら輝いて眩しかった。今は、輝いてるけど、淡い光なんだ。あったかくて、包み込んでくれるような、そんな光に満ちてる。色がなくなったときには想像できなかったことだけど、でも、今はもう大丈夫だよ。」

ちゃんと伝わっているかが心配。

でも、宮田くんは少し微笑んで、

「ありがとうございます、さん。」

そう言った。


お店を出るとすぐそこに達也がいた。

「まあたそんなに菓子買ったのかよ。」

「非常食よ。」

そういうと

「この先ずっと、引きこもるような辛い思いは絶対させねえって。」

なんて恥ずかしいことを言う。

でも、その言葉はきっと本当。






あの終わりがあったから、この始まりがあったんだと思う。

そして、この世界はきっと終わらない。

あたしはそう信じてる。

世界にまた色が溢れて、輝いてる。

彼の隣を歩くあたしの世界には、きっとたくさんの色が溢れて輝いているはず。




皆さまのお陰で無事に終わることが出来ました。
最後まで読んでくださってありがとうございます(深々)


桜風
04.5.31


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