王子様。 そんな恥ずかしい表現を今まですることなかったし、するつもりもなかった。 でも、彼を表現する言葉が見つからなくて、たぶん一番近い言葉が...王子様。 「大丈夫ですか?」 もう一度彼が聞いてくる。 「は、..い。」 声を絞り出して答え、独りで立とうとしたけどやっぱり体の調子が悪いのは直ってなくてどうしても上手くいかない。 「...ちょっと、失礼しますよ。」 そう言って彼が私を横抱きにして歩き出した。 突然の彼の行動についていけずに大人しく抱えられて、ひとつだけ思ったことは あたし、重くないかな? だったりする。 ホールの外へ出てそのまま少し運ばれていたけど、やっぱりこの状態は恥ずかしくて、 「すみません。もう大丈夫です。」 そう声を掛けた。 チラッとあたしを見た彼は 「...そうですか?」 と言いながら降ろしてくれた。 「あの、よく見にいらっしゃるんですか?ボクシング。」 聞いてみると 「まあ、それなりに。」 という返事が返ってきた。 そうか、ボクシング好きなんだ。 そう思っていると、遠くから何度も聞いたことのある声が聞こえてきた。 「おい、宮田が女といるぞ?」 「ホントっすね。控え室にも来ずに...」 一人は良く分からないけど、もう一人は達也の親友の青木。 そうなると当然に達也も一緒にいるはず。 ...でも、『宮田』って? 「あ?!じゃねえか?どうしたんだよこんな所で。」 青木が聞いてくるから 「試合見に来いって誰かさんに言われて来たのよ。ね?誰かさん?」 「あ〜...そういや、お前なんで宮田と一緒にいるんだよ。逆ナンか?」 顔の腫れた幼馴染、木村達也がそんなことを言ってくる。 「この人、木村さんたちの知り合いだったんですか?違いますよ。なんだか気分が悪そうだったんで、一緒に外まで出たんです。」 宮田くんっていうのかぁ... 「そうか!悪い、。お前人ごみ苦手だったよな、忘れてた。...大丈夫か?」 そう言って達也が慌てて本気で心配してくるから、まあ、いいかって思う。 そのお陰で宮田くんに出会えたことだし。 「うん、外の空気を吸ったからだいぶ良くなった。えっと、宮田くん?です。さっきはお世話になりました。ありがとうございます。」 改めてお礼を言う。 でも、緊張してしまって声が震えてしまっている。う〜、カッコ悪いよぉ... 「いえ、気にしないでください。じゃあ、木村さんたちがいるなら大丈夫ですね?あ、俺は宮田一郎です。気をつけて帰ってくださいよ、さん。」 そう言って宮田くんは達也と青木ともう一人に挨拶をしてすたすた帰っていった。 その後ろ姿を眺めながら、 『俺は宮田一郎です』 彼の自己紹介があたしの頭の中でリフレインされていた。 |
木村の東日本新人王トーナメントあたりの時期で考えています。
たぶん、18歳くらい。
そうなると、宮田は高校上がったばっかりですね。
王子という単語を見て浮かんだ人、それは言うまでもなく宮田でした。
桜風
04.5.23
ブラウザバックでお戻りください