都合のいいときだけ頼って、甘えて。 あたしはそんなあたしが嫌い。 そして、それを許してくれるあいつも、嫌い... 色のなくなった世界も、瞬いてる星も、誇らしげに咲いている花も、優しく吹く風も... 全部、きらい。 「?!」 土砂降りの雨の中、あたしの耳にその声が届く。 「ちょ、どうしたんだよ。ずぶ濡れじゃねぇか。...宮田は、どうした?」 そう言いながら達也は辺りを見渡すけど、当然宮田くんがいるはずない。 「...」 そう言って何故か達也に強く抱きしめられた。 「世界の色が、なくなっちゃった...」 あたしはまたそのまま達也の胸で子供のように泣きじゃくった。 達也は静かに強く、優しくあたしを抱きしめていた。 あの雨の日からあたしはずっと部屋に籠っている。 誰とも会いたくなくて、何もしたくなくて... 部屋に閉じこもったままのあたしをお母さんが心配するけど、誰かを安心させるための笑顔を作る余裕は今のあたしにはない。 そんなあたしの元へ毎日達也がやって来る。 ちょっと前まではあたしが毎日のように訪ねて行ってたのに、今度は達也が毎日やって来る。 「ごめんなさいね、まだ出てこないのよ。」 「いいっスよ。」 ドアの向こうの会話はいつもと変わらない。 お母さんが階段を下りて行った後、必ず達也はドアに凭れる。声の位置からして、きっと座っている。 そして、絶対に『出て来い』とは言わず、ただ、その日あった面白かったこととか失敗したこととかそんな何でもない話をする。 ただ、達也が気を遣ってくれてるっていうのが分かるのは、今まで宮田くんの話がひとつも出てこなかったから。 今日は何となく、ドアを挟んで背中を合わせて座ってみる。 そしたら、ドアの向こうで何だかちょっぴり笑った感じがした。 「なによ?」 「んにゃ。...お前さ、腹減らねぇの?そろそろ部屋に買い溜めてた菓子、無くなるんじゃね?何か作ってきてやろうか?」 そんなことを言われて驚く。 「何で知ってるの?お菓子があるって。」 「何となく。...コンビニに通ってただろ?」 楽しかった日々を思い出す。 声を聞いただけでその日の夕日はとてもきれいだった。走ってる姿を見かけた夜の星はいつもより輝いて見えて。 でも、今のあたしに世界には色がなくて、ただ無感動な時間が流れていくだけだった。 「ま、とにかく台所借りて何か作ってやるよ。」 そう言って達也が階段を下りて行った。 思えば、昔から達也は優しかった。 青木と一緒にいるときはやっぱりカッコつけたかったのか素っ気なかったけど、馬鹿やってたときにさえ、お願いすれば大抵のことは聞いてくれた。 電球を取り替えてくれたり、部屋の模様替え手伝ってくれたり。 両親の留守中に風邪を引いたらお見舞いに来てくれてご飯を作ってくれたこともあった。 そんなことを思い出していると背中のドアがノックされる。 「。おにぎり作ってきたから、ここに置いとくな?じゃあ、今日はもう帰るわ。食い終わったら皿を廊下に出しといてくれっておばさんが言ってたぜ。また明日な。」 そう言って去っていく達也に 「ありがとう。」 聞こえるかどうか分からないけど、そう呟いた。 「...おう。」 聞こえたみたい。 階段を下りていく音が遠ざかったからあたしはドアを開けておにぎりを部屋の中に入れた。 大きなさんかくおむすびは、きっと達也が作ってくれたもの。 塩が効いててちょっとしょっぱかったけど、とても温かくて美味しかった。 |
後半戦は(も?)キム兄さんに頑張ってもらいます。
桜風
04.5.27
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