世界に色がなくなってしまったと泣いた彼女の世界をもう一度彩ってやりたかった。 俺なんかじゃ、役不足だろうけど... それでも、彼女に見せてやりたい。思い出させてやりたい。世界はこんなにきれいで輝いてるって。 そして、笑ってほしい。 ―――ただそれだけが今の俺の願い。 最近のは家の外には出てこないけど、部屋からは出てくるようになった。 「よう。」 俺はいつものようにの家に顔を出す。 「やほ!暇人。」 「お前よか忙しいはずだよ、これでも。お前こそ、学校いいのか?」 高校最後の年にいきなり登校拒否だもんな。卒業できんのかよ。 「皆勤賞の勢いで学校行ってたからね。出席日数は足りてる。学校休み始めてまだひと月だし。もうここまで来たら卒業だけはさせてくれるよ、きっと。」 そう言ったは少しすっきりした顔をしていた。 もう、大丈夫だと思った。 だから、 「なあ、今度どっか出掛けね?俺、車の免許取ったんだぜ。」 そう言って見せてやると 「うわ、何この不細工面。写真写り悪ぅー。」 は俺の免許を手にとって爆笑する。 いや、笑ってくれるようになったのは嬉しいけど、これで笑われるとそれなりに落ち込むんだけど...? 一通り笑って息を切らしているは呼吸を整えながら免許を返してくる。 「あー、可笑しかった。ありがとう。う〜ん、どうしよっか?だって達也ってバイクを走らせて自分がその後を追いかけてたもんね...。」 「嫌なこと思い出させるなよ。第一、あれは二輪でこれは四輪。あんなことにならねぇよ。それに、今じゃバイクの免許も持ってるんだからな。まあ、いいや。で、どうするよ?」 そう言うとは少し悩んだ後、 「そだね、久々に出かけようか。達也、あたし海に行きたい。」 「今の時期にか?泳げねぇぞ?」 「泳ぐ気なんて無いから。海が見たいの。ダメ?」 積極的に外に出ようとするの気を挫くつもりも無いから 「了解。」 そう返事をした。 の都合のいい日を聞いて約束をした。 そして約束の日。土砂降りだった... 一応電話で確認するとやっぱり海には行きたいらしい。 そんなに離れてもないの家に車で迎えに行く。 「...本当に運転してる。」 呆然と呟くに苦笑しながら 「いいから乗れって。」 声を掛ける。 車に乗りながらは 「雨、嫌い...」 そう呟いていた。 ラジオをかけながら車を走らせていると窓の外に目を向けていたが 「あ、」 と呟いた。 「どうした?」 「うん。この曲好きなんだ。」 そう言っては曲に合わせて歌い始めた。 ちょっと外れているの歌声を聞きながら車を走らせる。 暫くして海が見えてくるとが歓声を上げる。 「達也、海が見えてきたよ!」 子供のようにはしゃぐがなんだか微笑ましくて少しだけ速度を上げた。 海に着くころには雨は上がっていた。ただ、太陽は出てこないけど。 車から降りて砂浜を歩く。 やっぱりこの時期の海は少し寒い。 も寒そうにしてるから俺の上着をかけてやる。 きょとんと俺を見上げてきたから、 「それ羽織ってろ。風邪引くぞ?」 というと、は 「えへへ...だぶだぶ。」 袖に腕を通して余った袖を振っていた。 雲の隙間から陽が差してきた。 俗に言う『天使の梯子』ってやつだ。 「きれいだよ、達也...」 言いながら海を眺めているがいた。 俺はの口から『きれい』という言葉が聞けたのが嬉しかった。 でも、それよりも俺はから目が離せなくなっていた。 その光景を見ているは、息もできないくらいきれいだった。 |
免許証の写真って結構写り悪くなりますよね?
...写るときに笑っちゃダメだからですかね?
桜風
04.5.29
ブラウザバックでお戻りください