別に、初めてって言うわけじゃないけど、でも、初めてだった。 こんなに優しくてあったかいキスは今までなかった。 彼は優しくて、それに甘えてしまう。 それでもいいって言ってくれる。 そんな人は初めて。でもそれは、今まで見えてなかっただけ... 雲の隙間から漏れてきた太陽の光にあたしは見惚れた。 世界に色がなくなったけど、でも、少しずつ、ちょっとずつだけどあたしの世界に色が戻ってきていた。 それは言うまでもなく、今あたしの隣に立っている達也のお陰。 達也の優しさがあたしに、世界にはたくさんの色が溢れてるって思い出させてくれた。 まだ、前のように輝いているほど色は溢れてないけど、それでも無彩色の世界じゃなくなった。 太陽の光を反射した海は金色に輝いて眩しかった。 「きれいだよ、達也...」 あたしは自然に呟いていた。 自分でも驚く。 このあたしの口から『きれい』なんて言葉が出てくるなんて... そして、こんなに『きれい』という言葉の響きが心地良いなんて、ずっと忘れてた気がする。 ふと、隣に立っている達也を見上げる。 海で反射した光を受けた達也がいつもと違って見えて一瞬息が詰まった。 達也が優しくあたしの髪を梳いてそして顔を近づけてくる。あたしもそれを受け入れそうになって、最後の良心がストップをかける。 「ちょっと待った。」 体を反らせて達也の肩を押すと 「やっぱり、宮田じゃないとダメか?」 なんだか辛そうに言う達也に 「違う、違う!!」 ぶんぶんと頭を振って否定した。 「じゃあ、何だよ。」 1回深呼吸をする。まっすぐに達也を見ることが出来なくて俯きながら伝える。 「あたしは、あの日から...ううん、ずっと前から達也に甘えてた。甘えすぎてた。都合のいいときだけ頼って、辛いときにだけ甘えて...。そんなんじゃダメだと思ったの。だから、その...」 「別に、構わねぇよ。」 そう言った達也の声が優しくて、思わず顔を上げた。 「都合のいいときに頼って、辛かったら甘えてくれて。俺はそれでもいい。今までずっと自分を誤魔化してきたけど、もう、誤魔化すのは止める。俺は、が好きだ。」 そう言った達也の目は真剣で、あたしは目を逸らせないでいた。 あたしたちは、お母さん同士が大親友で、生まれる前からの幼馴染。 ずっと一緒にいることが当たり前で、達也が隣に立っていることに違和感が少しもなくて... 今気付く。 あたしは達也が見えていなかった。 ずっと隣にいるから、隣にいることが分かっていたから探さなかった。 昔から、そして今も隣を見るとそこには達也がいて、いつも支えて励ましてくれていた。 途端に世界が変わった。 あたしが一番寛げる場所はどこか。あたしが一番穏やかにゆっくりした時間を感じることが出来る場所はどこか。 その答えは今、目の前にある。 それは、達也の傍。達也の隣。 「...ありがとう。」 世界が彩られていく。想いが涙になって溢れてくる。 そこは前とは違う輝きを持っていて、そして、嬉しいくらいにあたたかくて。 「。」 優しくあたしの名前を呼んだ達也が静かに口付けてきた。 世界の輝きが増した。 |
近すぎて見えないものって多いと思うんです。
有るのが当たり前だったり、そういうものの良さって本当に中々気付けないと思うんです。
桜風
04.5.30
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