Step by Step 6





宮田と約束をした時間に一駅隣の駅に着いた。

場所は、昔宮田家と供に訪れた公園なのかも知れない。

そういえば、宮田と再会したのも朝の散歩のときだったから自分の家と宮田の家はあまり離れていないのだろう。

ちゃん」と声を掛けられて振り向くと宮田が立っていた。

そういえば、2ヵ月半くらいぶりだ。

「お久しぶり」とがいうと「そうだね」と返された。

「何処行くの?」と聞くと「行った事あるところ」と宮田が返す。

自分の想像したとおりのようだ。


丁度満開の時期が重なり、公園内どこを見渡しても花見客で賑わっていた。

「凄いね。こんなだったっけ?」

ちゃんと来たときはもう散り始めてたらしいからね。此処まで多くなかったんじゃないかな」

父に話を聞いてみるとそう言われたのだ。

なるほど、と納得しては宮田の隣を歩く。

駅に着いたときにはは大きな荷物を持っていたのだが、今はそれは宮田が持っている。

いつの間にか持ってくれているという状況だった。何だかちょっと悔しい。

桜の木の下にシートを敷いて場所をとって騒いでいる人も多いけど、屋台があるからそれを目当てに移動している人も多くて意外と歩道もごった返している。

不意に自分以外の体温を手に感じた。

顔を上げると目の泳いでいる宮田が「人が多いから」とポソリと呟く。

「そだね、チロちゃんが迷子になったら大変だもんね」

「あー、はいはい」

適当に相槌を打ちながら宮田はそのまま足を進めた。

が言うにはお弁当を作ってくれたらしい。

自分としては全くそういうのは考えていなかった。何せ、電話の口実として口からポロリと出た言葉だったのだから。

と言うわけで、とりあえず腰を落ち着かせられるところを探しているのだが、

「たぶん、この様子だと無理だよね」

が呟く。

「そう..かも」

宮田も認めた。

こんなに人が多かったか?

それこそ、ではないがそんな事を思う。

「あ、じゃあ」と宮田が話を切り出した。

は首を傾げて続きを待った。

「ウチで、ってワケにはいかないかな?」

花見のために作ってきた弁当を家で食べるといったら怒るかな...

そう思って覗うように宮田がを見ると

「それはいいアイデアだわ」

と笑いながらの答えがあった。

ほっと胸を撫で下ろし、安心して暫く公園内を歩いて満開の桜を眺めた後、宮田家へと足を向けた。


「おじさんは?」

手は繋いだままで良いのだろうか...

どのタイミングで離して良いのか分からず、公園を出てからも手を繋いだままの状態にどうしたもんかと考えていた宮田にが言う。

「えーと...明日試合の選手がいるから計量..だったかな?」

確か、そんな事を言っていた。

自分は食事を外で済ませて帰るから、と言っていた気がする。

「おじさん、忙しいんだね」

感心したようにが言う。

「大学、いつから?」

「来週半ば。始まりはチロちゃんと一緒だと思うよ」

なるほど、と思いながら相槌を打ち、やがて自宅に着いた。

「あー、見覚えあるある!」

「だろうね。外観は全く変わってないはずだから」

そう言いながら鍵を挿してドアを開けた。

「どうぞ」と促すと「おじゃましまーす」と嬉しそうには言って靴を脱いだ。

「あー、でも家の中はあまり覚えてないよ」

キョロキョロと家の中を眺めながらが言った。

「中は..中もあまり変わってないと思うな」

家具の配置とかまでは責任持てないが、けど家具の配置は換えた記憶がない。

が遊びに来ていたときと言うなら、母親がこの家に居たときだろうし。家を出てからは態々家具の配置を見直すとは思えない。

まあ、色々あったから、無くなっている物とかは有ったかも知れないが...

パタパタとスリッパの音をさせてはまっすぐ廊下を歩いている。

ちゃん、こっち」

そう言ってリビングを指差した。

通り過ぎていたは回れ右をして戻ってくる。

「座ってて」と言ってソファを指差し、そのままキッチンへと向かった。

何かあったかな、と思いながら棚を見る。

「コーヒー、でいい?」

「お茶も入ってるよ。重かったでしょ?」

お弁当の入っている鞄を持っていた宮田にそう言った。

「なるほど」と言って宮田は皿を持って戻ってくる。宮田にとってはそうでもなかったようだ。

「...ちゃんは、なんで拗ねてるの?」

の機嫌が突然悪くなっている。

「別に、なんでもない。世の中の不条理に怒りを覚えただけ」

何のことだろう、と思いながら「怖い顔しないでもらえると嬉しいんだけど」と遠慮がちに宮田が言うと「努力します」とが返した。

とりあえず、何か余計なことを言ったら更に怒らせてしまいそうで宮田は沈黙を守り、唯一「お弁当、広げて良い?」と声を掛けただけだった。

それに対してもコクリと頷くだけに留まっている。

何しちゃったんだろう...

そう思いながら弁当を広げた宮田は目を丸くした。

意外にも、と口に出したらまた機嫌を損ねそうだから口にはしないものの美味しそうだ。

「これ、ちゃんが作ったの?」

「そうだよ」

憮然と返された。

「凄いな、美味そう」

その一言での機嫌が急上昇した。

忙しい人だな、と何となく思う。

「そう?これ、これ食べて。凄く自信作!!」

そう言いながら皿にお勧めのおかずをよそっていく。

何とかご機嫌に戻ったらしい。

そっと安堵の息を吐いて宮田はとりあえず勧められるおかずを全て口にしていった。









桜風
09.1.24


ブラウザバックでお戻りください