Step by Step 8





新人王トーナメントが始まって、取り敢えず勝利を収めた。

に電話を掛けてそれを報告する。

試合が終わってから観客席をぐるりと見たが、彼女の姿はなかった。

まあ、来ないだろうなと思っていたから別にがっかりしていないけど、やっぱり見てほしかったとか思う。

『おー、さすがチロちゃんだね』

は上機嫌に言う。

取り敢えず、宮田が勝つと嬉しいことは嬉しいらしい。

「そういえば、ちゃんの学校は夏休み、いつから?」

宮田が聞くと

『一応8月頭からだけど、今年はちょっと用事があるから半ばまでは居るよ』

と返事があった。

じゃあ、それまでだったら誘えば会えるのだろうか...

『どうかした?』

「あー、いや。特には...」

歯切れ悪く言う宮田に

『なーんだ。デートのお誘いかと思ったのに!』

が笑いながら返す。

デート!?

ぎょっとしたが、この間の花見は間違いなくデートっぽかった。

そうか、デートか。

自分は無意識にデートに誘っていたのか...

『チロちゃん?もっしもーし!魂、ちゃんと入ってる??』

「あ、ああ。うん、ごめん」

謝りながらもどうしたら良いのかちょっと悩む。

何かイベントでもあれば誘いやすいが、そんなポンポンイベントがあるわけじゃないし。

『チロちゃんの夏休みと言うか、次の試合ってどうなの?』

「まだ先だけど...」

何だろう。今度こそ試合に来る気なのかな?

『んじゃ、お出かけに付き合ってよ。デートのお誘い、デートのお誘い』

笑いながら言うは完璧宮田をからかっている。

ちょっと悔しいと思いながら

「何処に?」

『友達のバースデープレゼント買っておこうと思って。10月初っ端誕生日なんだよ』

そんな事を言う。

自分も来月誕生日なんだけどな...

そう思いながらも「いいよ」と返した。

の都合に合わせるというとさくっと日付を決められた。

『じゃあ、よろしく』




約束の日、宮田はを迎えに行った。

は駅で待ち合わせと話していたのだが、迎えに行くと申し出たのだ。

「あー、ごめんね。態々」

「...いいよ」

ちょっと驚いた。

何か違うと思って、やっと分かった。

いつも下ろしている髪を上げているのだ。

それだけで印象が違うもんなんだな、と思う。

履いているものは少しヒールの高いサンダルだからいつもよりも目線が近くなっている。

何か、ずるいと思ってしまった。

「不機嫌ですか?」

が顔を覗きこんで言う。

「いいや、特には」

そう返した宮田に首を傾げてはそのまま隣を歩いて駅に向かった。

「てか、人多いね」

「全部の学校が夏休みだからね」

小学校から大学まで幅広く夏休み中だ。

「此処まで多いとは...」

呆れたようにが言う。

しかも何かのイベントと被ってしまったのかいつもと比較にならないほど多い。

宮田も流石にこれには驚いた。

「大丈夫?」

「お陰様で」

軽く言うに「それはよかった」と宮田も軽く返した。

降りる駅が近づくと宮田がの手を引いてドアまで連れて行った。

「んー、チロちゃんと一緒で正解だったかも」

既に疲労困憊な状態のが呟いた。

「髪、大丈夫?」

少し落ちてきている。

取り敢えず、自分には未知なる世界だから心配だ。

「ちょっとトイレで見てくる」

そう言っては化粧室に向かった。


手持ち無沙汰に待っているとやがてが戻ってきた。

崩れていた髪も元通りだ。

「凄いね」

素直に感想を口にするとは首をかしげる。

「それ」と言って髪を指差した。

「ああ、まあ。長い付き合いだから」

笑いながらそう言い、「行こ」と促しては北口を目指した。


「何を買うつもり?」

「まあ、何だろう。何が良いのかなー。取り敢えず色々見てみる」

そう言っては大型ショッピングモールへと向かっていった。









桜風
09.2.7


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