| 年が明けて、の後期試験が終わった日、宮田とは買い物に出た。 クリスマスとかそういうイベントに興味がないというか、踊らされるのがイヤだ、とが呟いたときには意外に思った。 そういうの、特に好きってほどではないにしても、それなりに年相応の女の子として好きそうだし、色々とチェックしてそうだと思ったのに。 「興味ないっていうか、人が多いのが好きじゃないだけって言うか...」 がそう補足した。 まあ、確かに普段から人が多い都会で、さらにイベントのお陰で人が多くて疲れるといえば疲れる。 宮田も賛成し、ついでだからの試験が終了してからデートをしようと話して今日に至るのだ。 「買い物って何が欲しいの?」 「服だよー」と上機嫌にが言う。 時間が掛かりそうだ、と一応覚悟を決めての後を歩いた。 どうやらお気に入りのブランドがあるらしく、商業施設に足を踏み入れてそのまま迷うことなくなっすぐに進んでいったショップに躊躇することなく入っていく。 宮田は嘆息吐いてそれについていった。 が店員とあれやこれやで会話をしながらニットを選んでいるのを眺めていた宮田がふと視線を滑らせるとそこにはちょっとしたアクセサリやベルトなどの小物が置いてある。 ああ、こういう色使い好きそうだな、と宮田はふと視界に入ったブレスレットを見てそう思った。 「チロちゃん」と声を掛けられてに視線を向ける。 「どっちが可愛い?」 そう言って色違いで似たデザインのワンピースを見せる。あれ、ニットはどうした?と思って見たら、既にキープしているのか、傍に居る店員がそれらしきものを持っている。 「どっちも可愛いと思う」 正直、よく分からないのだ。 「もー!」とが膨れたため、「着てみないとわかんないんじゃないの?」と返した。 「...それもそうね。ちょっと着てみる」 そう言って傍に居た店員に声を掛けて試着室に入っていった。 「何かお探しですか?」 別の店員に声を掛けられた。 特にこれと言って探しているわけじゃないけど... 「これ、いいなって」 正直に言った。 「そうですね、彼女さんに良くお似合いになると思いますよ」 ニコリと微笑んでそういわれた。 を『彼女』と第三者に言われて何だか照れくさい思いをする。 「これ、プレゼントに」と言ってさっきから気になっていたものを店員に渡した。 「ありがとうございます」と店員はそれを受け取り、レジへと向かった。 「どうだ!」とちょうどが試着室から出てきた。 「うん、似合うんじゃない?」 「じゃあ、もう片方ね。ちゃんとこれ覚えててよ」 そう言って念を押し、また試着室に戻っていった。 その間、宮田はレジで支払いを済ませて購入したものをジャケットのポケットに仕舞った。 暫くしてが再び現れる。 「...さっきの方かな?」 どっちも可愛いと思うが、色的にはさっきの方が似合っていた気がする。 少し悩んだ様子の宮田には少し機嫌がいい。 適当に見ていない証拠だ。 適当に、どうでも良いと思っているなら「それでいいんじゃないか」といった表現をすると予想していたのだ。 「じゃあ、さっきのにする」 そう言って店員にそれを渡してまた試着室に戻った。 取り敢えず、難関は突破できたらしい。 ほっと息を吐いていると店員がクスリと笑った。 「仲が良いですね」といわれ、「そうですかね」と適当に返した。 店を後にし、紅茶が飲みたいというの主張に応じてカフェを目指した。 先ほど購入した服が入った袋を持とうかとに声を掛けると、「荷物を持つのも買い物のうちだから」と断られた。 「じゃあ、疲れたら貸してよ」と言うと「ありがとう」と返される。 紅茶専門店を見つけてそこに入ってみた。 延々メニューとにらめっこしていたは暫くしてやっと注文するものを決めた。 流石に紅茶専門店でコーヒーは頼めないだろうな、と思った宮田は、良く耳にする紅茶の名目を見つけてそれにした。 たぶん、よく耳にするということは飲んだこともあるはずだから。 「ねえ、チロちゃんが甘いものを食べないのってボクシングと関係あるの?」 注文を済ませて一息ついたが急に問うてきた。 「好んで食べるほどじゃないってくらいだけど。まあ、一応それもあるね。というか、ずっと気になってるんだけど」 そう言って宮田は言葉を区切って水を飲む。 何かな、とは首を傾げた。 「いつまで『チロちゃん』?」 大問題だ。 は首を傾げたまま、視線を彷徨わせる。なにやら暫く考えた挙句「チロくん?」と言った。 『チロ』から離れないんだ... 内心脱力する。 何か、『チロ』って犬みたいなんだけど... そう思ったが口にしない。 言ったら「可愛いじゃない!」と喜びそうだから。絶対に『チロ』から離れてくれそうにないから。 「チロくんじゃ、ダメ?」 「...今は、それでいいよ」 ゆっくりレベルアップしてもらうことにしよう。 宮田の返答に満足したのか、は「へへ」と笑って水を飲む。 の照れたような笑顔を目にした宮田の口元も自然と綻んだ。 |
桜風
09.4.4
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