まっすぐ! 3





ゼミの飲み会で結局最終便を逃してそのままカラオケに行って始発を待って帰宅した。

さすがにクタクタだ。

重い足取りで階段を昇って2階に出た。

「...あ」

ジャージ姿のお隣さんが居た。

彼はちょうど出かけるところみたいだ。

こんな時間にお出かけ、って何の用事だろう。いや、走るだけなんだろうな...

「おはようございます」

が声をかけると彼は驚いたように眉を上げた。

「おはようございます。仕事ですか?」

「...ゼミで飲んで、最終便逃して、タクシーってのもアレだなって思って。結局オール」

彼はの言葉に呆れたような表情を浮かべた。

その表情にムッとしたが、「聞いてもいいですか?」とは話を続けた。

「何ですか?」

「名前。わたしは

「...ああ、宮田。宮田一郎」

「年はいくつ?」

「自分から言うのが礼儀じゃないんですか?」

からかうように宮田が言う。

「花も恥らう何たらに年齢を言わそうとするのは失礼よ!」

「花も恥らう、ね」といいながら宮田は「今年で二十歳ですよ」と応えた。

「何だ、年下なのね」

「で?さんは?」

「大学の4回生」

「『4回生』?」

「4年生ってこと」

聞きなれない単語なのだろう。

ん?ということは彼は大学に行っていないのか?

「じゃあ、一番若く見積もって、今年22ってことか」

「そこ!計算しない!」

がいうと彼は面白そうに喉の奥で笑って「はいはい。年上の言うことは聞かないといけませんね」という。

生意気なヤツ!と顔をしかめているにちらりと視線を向けて「じゃ。早く寝たほうがいいんじゃないですか?お肌に悪いですよ。曲がり角っていつなんですか?」と余計な一言を加えて彼女の横を通り過ぎようとした。

しかし、それは彼女自身の手によって阻まれる。

は宮田のTシャツの裾を掴んで、引っ張った。

ガクン、と進んでいた反対の方向に力が加わり、宮田は不快そうに振り返る。

「この間!」とが言う。

「...この間?いつですか??」

「えーと、ひと月以上前..かな?」

宮田は眉間に皺を寄せた。

「3階の酔っ払い」とが言うとやっと思い出したように「ああ」と呟く。

「それが?」

「ありがとう」

まっすぐの一言に宮田は目をぱちくりした。

「お礼、言えなかったから」

「...ああ、いえ。別に。オレもあれは迷惑だって思ったから」

「助かっちゃった。結構あの時パニくってたんだ」

「そんなオーラを出してましたよ」

宮田の言葉に「え!?」とは思わず声を漏らす。

「泣いてるのかと思って、思わず声を掛けたんです。まあ、泣いていたらそれはそれで面倒だな、とも思ったんですけどね」

の表情が複雑なものに変わった。

優しいのか、そうでないのか分からない発言だ。

「あ、えーと。引き止めてごめん。じゃあ...」

考えても人の思いなんて他人が推測して当てることは出来ないからそれは無駄だと思って考えるのを止めた。

とりあえず、睡眠が大事だ。


「何で、走ってるんだろう...」

ふとんに入って寝る前にふとそんなことを思った。

今度会ったときに、聞いてみよう。

何で大学に行かなかったも含めて...









桜風
09.11.7


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